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侍、肉を手に入れる

「く、く、首が……。首、ちょんぱ……なのら」

 

「リリデル殿、怪我はなかったでござるか」


「だ、だ、大丈夫なのら。ちょっと、ビックリしすぎて腰が抜けちゃったのら」


「こやつ、一体何の獣でござる?」


 熊のようだがそれにしては耳がでかい。牙も象程に大きく飛び出し、爪なんぞ赤く光っておる。


「これは獣じゃなくて、さっき言った魔物なのら。か、鑑定してみるから、待って欲しいのら」


 そう言ってリリデル殿が手をかざすと文字が浮かび上がる。


 【名前】 ジェネラルベアー

 【階級】 A

 【備考】 凄まじい殺気で相手を動けなくするのが得意。爪に猛毒があるが、肉は脂が程よくのって旨い。


「なんと……。こやつの肉は旨いのか」


 思わずジェネラルベアーとやらを凝視してしまった。


「本当なのら……お肉は脂がのって――って違うのら!! 重要なのはそこじゃないらっ!!

……この魔物、A階級なのら。そ、そんな強い魔物を、マルさんあっという間に倒しちゃったのら」

 呆然と魔物を見つめるリリデル殿。お口があんぐりしておるぞ。


「強い? まぁ確かに殺気は凄かったが、それ程の強者とは思わなかったぞ」


 事実である。実際、スパッと倒せたし動きも遅い。強いというなら拙者の一太刀くらいは避けて欲しいものである。


「そっ、そんなはずないのらっ! A階級の魔物は、4人組のパーティーが2組以上集まってやっと倒せるような魔物なのらっ! それを、それを……たったレベル3の人族が、しかも一人で倒すなんて」


 なにやら凄い剣幕で力説している。というよりも、拙者、責められてる気がするぞ。

 べ、別に倒せたのだからそれでよいではござらんか? 


「マルさん……一体何者なのらっ? それとも僕の鑑定魔法が失敗したのら?」


「だから言ったであろう。拙者、なかなかに強者の侍でござる、と」


 まだ納得しない様子のリリデル殿は「やっぱり鑑定しなおすら!それに、あの三種の神器も調べ直して――」とぶつぶつ言って意気込んでおったので、なんとか忘れさせようと話を逸らした。


「そ、そういえば『宝珠』とやらはどこにあるのでござる? こやつも魔物だったならその宝珠とやらを頂戴してはいかがか?」


 すると何か思い出したかのようにパッと笑顔になった。なんとも単純で助かるでござるなぁ。


「そうなのらっ! そうなのらっ! A階級の魔物だから凄い宝珠を持ってると思うのら。予期しない魔物狩りだったけど、グッドタイミングなのら~」


 グッドタイミング~? 

 またしてもわからぬ言葉だが、リリデル殿が楽しそうなので良き良き。


「宝珠は、魔物の心臓近くにあることが多いのら。だから、解体しないといけないのら」


 予想外の言葉が飛び込んできた。

 か、解体っ!?

 平然とした顔で言うが、まさかリリデル殿が解体するのかっ? 首ちょんぱと驚いておったリリデル殿がっ!?


 しかし、リリデル殿が刃物を取り出す様子はなく、変わりに両の手を地面へと当てた。


魔傀儡ポーネ、解体っ!」


 何かを唱えたかと思うと、ボコッと地面が音を立て盛り上がっていく。盛り上がった地面は、瞬く間に人の形をかたどり、操られているかのように動き出した。


「な、な、何奴っ!! リリデル殿っコイツはなんぞっ!?」


 瞬時に刀を握る。――しかし、おかしい。こやつからは正気というものをまるで感じないでござるぞ。


「あぁっ、マルさん待って欲しいのら! この人形は僕の魔法なのらっ。危なくないのらっ! 僕じゃ解体は出来ないから、この人形がやってくれるのら!」


「に、人形っ!?」


 この土の塊がでござるか?

 拙者の知る人形とは、これまた随分様子が異なる。怪しい動きをしたら……斬るっ。


 人形はギギっとぎこちなく歩きだし、魔物の側へと近寄ると何処からともなく小刀を取り出した。そして、目にも止まらぬ早さで小刀を動かす。

 気づけば、目の前には美味しそうなお肉、それに毛皮、牙に爪。そしてゴロンっと大きな光る石が並んでいた。


「むぅっ、見事な手捌きである」


 思わずその仕事ぶりに感激してしまった。

 「ご苦労様なのら~」とリリデル殿が手を振るとその人形は跡形もなく崩れ去り土へと還っていった。

 それにしても、この石。


「リリデル殿、これが言っていた宝珠とやらでござるか? なんとも大きい、そして綺麗な石でござるっ」


「そうなのらっ! まさかこんなに大きいと思わなかったのら。さ、さすがA級なのら。……さっ、これを持って町に行くのら! 皮とか爪も売れると思うから一緒に持っていくのら~」


「して、この肉は……どうするでござる?」


 この肉、売ってしまうには惜しい気もするが。


「せっかくのお肉、売るには勿体ないのら! 僕が魔法で冷凍しとくら! そんで、マルさん料理して欲しいのら」


「食べていいと申すか? ふむっ! 拙者、喜んで承ったっ」


 思わぬところで旨そうな肉が手に入り、るんるんでござる。

 さぁ、町は目の前! いざっ!






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