侍、肉が大切
それからリリデル殿は土人形を呼び出し、デスシープの解体が始まった。
「うむっ、今回も素晴らしい手捌きであるっ!」
「魔傀儡に任せればバッチリなのらっ。デスシープの素材なんて、滅多に見ることも出来ない超一級品っ! 毛の一本も無駄に出来ないらっ」
「ふぉふぉー。傀儡の魔法があるとは聞いていたが……確か、どこかの王族しか使えんと言っておったがのぉ。ワシも初めて見るのぉ」
おじじ殿は独り言のように呟いた。
「らっ、らら! も、もう解体終わるのらっ!! ご、ご苦労様なのらぁ~っ」
その言葉を合図に土へと戻る人形。地面には真っ白な綿のような大量の毛、角が2本、鋭利な骨が16本、蹄が4つ、皮、あとあれは花か? そして……
「おおぅっ!! これまた旨そうな肉でござるっ! 引き締まった身っ、独特な香りがするでござるが……。くぅっー、食べるのが楽しみでござるなっ」
「ま、マルさぁーん! 肉よりも先に目に入るものがあると思うらっ!!」
そう言うリリデル殿の両手の中には、深紅に輝く大きな石が握られていた。
確か、宝珠であったな。この間のものとは色が違うでござる。それに大きさも段違いに大きい! 宝珠は食えぬが、金と交換出来るからな! 町に戻り次第、ダナト殿のところへ持っていかねば。
「ふぉっ。なんと立派な宝珠かのぉ。それに、あの大きさのデスシープなら、と思っておったが。やっぱりあったのぉっ!」
おじじ殿は嬉しそうに花をつまみ上げる。
むぅっ? ただの花のようにも思えるが、珍しい物なのかっ?
「ららっ!? それって、ララポ草らっ!!」
ららぽ草――そういえば、がまとっとの材料に必要だと言っていたが。
「何故デスシープの解体品から花が出てきたのでござる?」
こちらをチラッと見たおじじ殿はにやりと口角を上げた。な、なんだか不気味でござるな……。
「実はのぉ、ララポ草は別名 寄生花と呼ばれててのぉ。普段は月明かりが注ぐ池の麓に咲くんじゃが……」
何でも、魔力が高い魔物が近くを通ると種を植え付け、その魔力を吸い上げて成長していくようでござる。そして、永い年月を経て花を開花させるのだとか。
だからS階級の魔物や大きく成長している魔物の体には稀にララポ草が花を咲かせているらしい。
いやはや、なんとも恐ろしい草であるな!
「では、これにて材料全てが揃ったわけでござるなっ?」
「らっ!! これで夢限鞄が作れるのらっ! ドルルさんっ早速作りたいのらぁ~」
跳び跳ねながら、上目遣いおねだり。流石天然人たらしのリリデル殿。
「ふぉーふぉーっ!! ヨタマル坊や、錬金壺を出してくれるかのぉ?」
うぅむ、勿論である! ここまで来て出し惜しみなど、拙者、そこまで女々しくないでござるからなっ!
腰袋から壺を取り出し、ガチャっと二人の前に置く。ふぉぉ~とか、やっとゆっくり見れるらぁとか色々と声は聞こえてくるが、まぁ、存分に使ってくれい!
「魔物が来ないか拙者が見張っておく故、ゆっくり作ると良いでござる」
「すまないのぉ。デスシープ以外はこの頂上におらんと思うんじゃが、頼むのぉ。――ふぉふぉっ! ではリリデル坊っ早速行くぞいっ!!」
「ららっ!!」
満面の笑みで壺を取り囲む二人。パッと見、とても怪しい集まりのようにも見えてしまうでござるが。ま、まぁ、楽しそうならばそれで良しである!
材料を次々に壺へと放り込む。デスシープの皮にララポ草を少々。おじじ殿が指から水を出し入れ、リリデル殿が壺へと手をかざす。
なんと、壺が淡く光り出したでござる! おまけにブクブク、何やら煮込むような音もするぞ。
カッッと光が空へ伸びたと思った矢先、歓声にも似た声が山頂に響き渡った。
「で、で、出来たのらぁぁあー!!」




