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侍と不思議山

「ここはデスシープの住み処なんじゃ。デスシープが作ったデスシープのための眠眠山ミーンマウンテン。ここはデスシープの吐息が常に満たされた状態でのぉ、魔力が低い者は影響を受け易いとは知っておったのだが……まさか魔力0じゃとこんなに効果があろうとは思わなくてのぉ」


 みんまんてん?

 拙者、何に影響されたというのだ? 眠り薬でも盛られたというのか?

 

「ここがデスシープの住み処だったのらっ!? デスシープの吐息ってことは……まさか睡眠効果がこの空間全部に広がってるのらっ!?」


「そうじゃ。本来、対面したときに食らう吐息は強い睡眠作用があるのじゃが。ここのように空間に漂うことで、効果は山全体に及ぶが作用自体は弱まる。高い魔力がある者ならば何ら問題の無い。まぁ、ヨタマル坊には効果てきめんであったがのぉ」


 何やら複雑な単語が飛び交い、拙者、会話に入っていけなかった。が、つまりはこの山全体に眠り薬が撒かれていて、拙者はその効果を受けやすい、ということだろうか。


「むぅ、迷惑をかけ面目ないでござる。しかし、リリデル殿が何やら唱えてからは拙者、大丈夫なのでござるっ! もう寝ないのだっ!」


「ふぉっふぉ。それが良いのぉ。デスシープは夢喰いを得意とするからのぉ。眠ったら最後、頭から喰われて骨しか残らないのぉ」


「なっ、なんと恐ろしき魔物っ!!……ま、まさかっ! デスシープとは白いモコモコの毛皮に丸まった角が二本生えた生き物のことでござるかっ?」


 まさかと思って聞いてみたが、これが大正解。デスシープとは羊のことでござった。……ということは、拙者、危うく死にかけていたのかっ!!

 思わずブルッ。体が震えてしまった。

 デスシープは白い雲のように空に漂い、山頂付近を根城にしているそうだ。基本的には拙者らが眠るか直接攻撃を仕掛けなければ襲ってこない魔物らしい。……悪く言えば、簡単に姿を現してくれず見つけにくいと言うことのようだが。


 思わずはぁっとため息をつく。こういう性格の獣はどうも苦手である。用心深く、それでいて大胆不敵。なかなかに骨が折れる狩りとなりそうでござるなぁ。


 ははっと自嘲的に笑い、空を見上げていたときだった。

 何やら前方より鋭い視線と纏わりつくような殺気に見舞われ咄嗟に刀を握る。


 二匹……いや、三匹か。


「マルさん? 急にどうしたのら、怖い顔をして」


 来るっ!!

 刹那、リリデル殿の横顔めがけて詰め寄る黒い影。それめがけて、刀を抜き様に一太刀。ザシュッ……

 続け様に、拙者の足元へと滑り込み鋭い牙をむき出しにした影へと刀を振り下ろす。仕上げは……。


「かぁぁあっ!!!!」


 殺気を全開にまで練り上げ、残りの一匹めがけて解き放つ。


「なな、なんじゃっ!」

「らっ、か、風がっ!!」


 風圧が辺り一面の草をなぎ倒し、それと共に纏わりつく殺気が消えていく。

 ――終いでござるな。

 チンっと音を響かせ刀を鞘へと納める。

 そのまままっすぐ歩き、木の幹近くの茂みへと視線を落とすと、ブクブクと泡を吹き、白目を向いたカエルのような生き物がひっくり返っていた。


「ひっ、ひぃっ! ラーバン、ラーバンが死んでるのらっ!!」


 足元に両断されたそれを見て、リリデル殿は、悲鳴に近い叫び声を上げた。

 らーばん……拙者が斬り伏せた者と今目の前でひっくり返ってる者は同じであろう。足を掴みひょいっと持ち上げる。


「これも、そのらーばんとやらでござるか?」


 リリデル殿に見せるや否や、更に大きな悲鳴が響いたのは言うまでもなかった。


「ららら、ラーバンなのらぁぁあっ!」


 怯えるリリデル殿を横目に、おじじ殿は冷静にこちらを見つめる。


「よ、よくラーバン三匹をこんなにあっさりと……。そ、その手にもってる奴は生きとるのかのぉ?」

 

「うむ。殺気に当てただけでござるからな。今は意識をなくしているが暫くした後、戻るであろう」


 するとまたしても、ひぃぃっとリリデル殿の叫び声が山に木霊した。


「ははは、早くっ! 早くやっつけるのら!」


 恐怖のあまりなんとも野蛮なことを叫んでおるな。しかし、拙者……無益な殺生は避けたいのである。拙者達の命の危機が迫っておるならば致し方無しであるが、そうでないならば殺めることは出来ん!

 そう思って口を開きかけたとき、おじじ殿の声がそれを遮った。


「いや……恐らくそんな事せんでも大丈夫じゃのぉ。ここは眠眠山ミーンマウンテンの中、その証拠に……」


 話の最中、突然手にもっていたカエルの足がブクブクと音を立て柔らかくなったかと思うと、突如として消えてなくなってしまった。

 拙者の手には小さな光る石が代わりに握られ、地面には針のようなものが二本転がっていた。

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