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侍、心の休息

 ガチャンっと取り出したのは例のあれ。もちろん三種の神器だ。


「うむ、では米を5合程頼むでござる」


 鏡を両手にしっかり持ち、米の量を伝える。

 じゃらじゃらと勢い良く飛び出る米。前回よりも量が多いからか鏡から溢れそうである。


「お、おおおおり、オリハルコンじゃとっ!?」


 おじじ殿は突然大声を上げ、口をあんぐりと開けた状態で固まっている。

 ……口を開けても米は生では食えぬ故、まだあげられぬぞ?


「あっ、そういえばリリデル殿。今回はジェネラルベアーのお肉も食べようと思うが良いでござるかっ?」


「勿論良いのらっ!」


 凍った状態のお肉。リリデル殿が「リリース」と唱えるなりプルっプルのお肉に戻った。

 この肉、見た目は豚肉のようでござる。程よい脂、絞まった身。これは味噌焼きが合いそうだな。


「では、肉を切り分けて……と」


 勿論使うのは包丁だ。

 切れ味も確認したかった故、ちょうどいいでこざるな。


「せせ、せいせい、聖なる剣っ!?」


 またしてもおじじ殿のけたたましい声が響く。が、今はお肉に忙しい。鮮度が大切であるからな。

 サクッ。

 肉に包丁の刃を当てるだけですっと切れていく。恐ろしいほどの切れ味。切り口も申し分なしでござる。筋を切り、肉を叩き。本当なら塩、胡椒があると良いのだが。


「誰かお酒なんぞ持ってないでござるか?」


 物は試しと思い聞いてみた。「あ、あぁ。それならワシの水袋に」とおじじ殿の声。しかし、拙者を見てない上に、どこか上の空のようだが。

 手を差し出すとそっと酒瓶を手渡してくれた。


 うぅーむ、肉を酒につければこれで良しっ。

 その間に、味噌玉を3つ程取り出す。この鍋も米を炊くのに必要でござるからなっ!


「そ、それはまさしく! れ、れ、錬金つほじゃっ!! い、今、中から何を取り出したのじゃっ? 錬金したものか?! ワシにも見せてくれのぉ」


「む、うぅむ」 


「ま、マルさんっ。まさか、また錬金壺を火に。火にかけるつもりじゃないのらっ!?」


「……ぬっ?」


 間髪いれずに二人からの猛攻撃。

 リリデル殿の睨んだ目が拙者に向けられる。


「二人ともっ! うるさいでござるっ!! 拙者、飯を作るのに忙しいのだぞ!! 大人しく待つのだ!」


 思わず怒鳴ってしまった。いや、だって腹が減っておるのだ。飯が食べたいのだ!

 と言っても、大人しくしている二人ではなく。拙者の邪魔はしなくなったが「オリハルコンの鏡がどうのこうの……」「聖なる剣を持つからにはどうのこうの……」二人でとやかく話していた。


 まったく、暇なら拙者を手伝って欲しいものでござる。酒につけていた肉を取り出し、味噌を塗りたくる。あとは、火を起こせば準備は完了でござるな。

 落ちている枯れ木を集め、携帯していた火打石を打ち付け火をつける。

 ボッという音と共に橙色の火が枝へと燃え移る。「なんじゃとっ!?」なんて驚いた声をあげていたのはドルフル殿。何に驚いたのかは解らぬが、火をじっと凝視している。


 火の回りには枝に刺した肉を置き、鍋を火に当てれば、暫し待つのみ。

 その間におじじ殿に飲み水を出してもらった。指を一本出すと、なんとそこから水がでたのだ!異世界では、水も火もすべて妖術、……魔法とやらで賄えるらしい。拙者のように自分で火をつけるのを見たのは初めてだったようだ。

 だから、さっき火を凝視していたのだな。


 そうこうしているうちに、鍋が良い感じにふつふつと。


「そろそろ良さそうでござるっ! ささ、リリデル殿、ドルフル殿、熱いうちにたべるでござるよ!」


 米は勿論握り飯に。味つけは無しでただ握っただけである。


「マルさんっありがとうなのらっ!! 早速たべるのらぁ~」


 そういって大きな口を開け頬張るリリデル殿。一瞬顔を上げ、にやぁっとしたかと思うと無言で米も肉も掻き込んでいる。まぁ、美味しいのなら良かったでござるよ。


 おじじ殿は困り顔をしていたが、リリデル殿の食べっぷりを見て握り飯を恐る恐る一口。


「な、なんじゃこれはっ!! 噛むほどに優しい甘味、焦げ付いたところですら香ばしくてそれでいて旨すぎるのぉっ!」


 うむうむ、そうであろう。


「その米と、この味噌焼き。恐ろしく相性抜群でござるぞ!」


 何て言ってみるに、おじじ殿は口に米をいれたまま肉にかぶりついていた。うまいのぉ、うまいのぉって何度も言いながらでござる。

 誰かと一緒に飯を食う。そんな些細なことでも、拙者にとって最高の心の休息でござるな。

 二人に負けじと拙者も大口を開け、飯にお肉にとかぶりついていった。


 

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