侍の腹の限界
今回は休憩……ということで少し短めです
「わかったのでござる! ちゃんと説明するから、落ち着くのだ!」
二人からの質問責めがあまりにも凄まじく、拙者、自分で説明してみることにした。
要は、拙者達の故郷では『気』を自在に操ることから鍛練がはじまる。平常時は『気』の量を減らし、忍ぶ際は『気』を限りなく0へと近付ける。威嚇する際は『気』を殺気へと変化させ、戦う際は『気』を闘気へ変化させる。
恐らくこの『気』の変化が、リリデル殿達の言うところのレベルであったり、ステータス? とやらであり、強さの変化となっているに違いない、と。
「な、なるほどなのら。――実はさっきマルさんが岩を斬る時、盗視でステータスを見てたのら。そしたら、レベル3だったのが急に297まで跳ね上がって、攻撃力も防御力も一緒に上がってたのら!」
「恐らく、お主は変動タイプなのだろうのぉ。ワシはこの眼鏡でお主のことを暫く見ていたのだが――」
いやいや、見ていたというよりも後をつけて拙者の味噌玉の壺を狙ってたのでござろう。
「歩いてるときも絶えず数値が変動していたのぉ。変動タイプなど、古い文献でしか見たことがなかったからまさかと思ったのだが……。でも、それだけに実に勿体ないのぉ。魔力がまったく無いというのは」
魔力……。リリデル殿からも良くその言葉を耳にするが、あれであろう? 妖術の類いを使うためのもの。
そんなもの拙者には必要ないでござるからなっ! 刀一本っ、これで十分っ!! ……あ、でも三種の神器は必要であるなっ。
「大丈夫なのらっ、それを補うに十分なくらい僕が魔法を使うのら! 魔力だけなら僕達妖精族の右に出るものはいないのらっ!」
腰に両手をつき、えっへんっと鼻を伸ばしている。その可愛さも妖術の類いなのではないだろうかと思ってしまうでござるなぁ。
しかし――、それにしても腹が減った。当然である。拙者達、朝餉を食べに宿場を出たというに、結局何も飲まず食わずのままこの状況。
「り、リリデル殿ぉ。すまぬがいい加減、拙者、腹が減って骨皮筋丸になってしまうでござる。もう歩くのも辛い故、ここで飯を作っても良いでござるか」
思い出したように拙者の腹も大合唱。
リリデル殿も「そういえばそうだったのら」って思い出したように腹を鳴らしている。……ならば、と目線をおじじ殿へ。
「良ければ一緒に飯でも食わぬでござるか? えっと……」
しまったっ!! 拙者としたことが名乗りもせず。しかもおじじ殿の名前もわからんぞっ!
「ふぉっワシの名前はドルフルじゃ」
何か察したようにおじじ殿は名前を教えてくれた。ついでに、竜族と人族のハーフで水妖術が得意なのだとか。
「いいのぉ。一緒に食べてもいいというならお邪魔させてもらうのぉ。水ならワシがいくらでも出せる。必要なら言ってくれのぉ」
「ドルフル殿、かたじけない。拙者、侍の与太丸と申す。こちらはリリデル殿だ」
「すまないが、もう知っておるのぉ。悪いとは思ったんじゃが、この眼鏡で二人とも見させてもらったからのぉ。でも改めてわかったのじゃが、この眼鏡。袋とか壁とか見たいものの間に障害があると中々に詳しく見れんのが悩みじゃのぉ」
ふぉふぉふぉと笑っているが、それは盗み見というのではないか?! まぁ、これから同じ飯を食う仲、堅いことは言いっこなしでござるな。
「それで、こんな何もないところで何をすると言うのかのぉ?」
辺りを見渡すドルフル殿もといおじじ殿。殺風景なここには何もない。逆に言えば何もないからこそ好きにすることが出来る。
「まぁすぐ準備する故、少々待つでこざるよ」




