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侍とおじじ殿

 店を出た拙者達はまっすぐに宿場へと向かった。慣れぬ環境もあり、ベッド? とやらに寝そべるなりすぐさま眠りについてしまったのである。……まぁ町でしゃぎすぎたのが疲れの原因かもしれぬが。


 この宿場は一泊500ゴールドだったのだが、この世界の金相場的に普通なのだとか。「10万ゴールドあれば大人二人でも数ヵ月は困らないのら」と言うので、暫くはこの町に滞在するだろうと七日間程部屋を借りることとした。もちろん、リリデル殿と部屋は別。合計7000ゴールド、中々に奮発してしまったのである。


 しかし、異世界の宿場には風呂もなければ食事も付かぬとは。「それが普通じゃないのら?」なんてリリデル殿は言っていたが、拙者の故郷では考えられん! 朝には質素ながらも朝餉が出るもの! 拙者、腹が減ったのである!


「というわけで、リリデル殿っ! この町に食事処はないでござるか? 良ければリリデル殿も一緒に朝餉を食べに行こうぞ」


 朝早くにリリデル殿の部屋を訪れ、開口一番に誘った。


「行くのらっ!! それにちょっとお買い物もしたいのら~っ」

 

 買いたいものとは何なのか聞いてみたところ、夢限鞄ガマトートなる物が欲しいと言っていた。何でも、見た目は小さき革袋だが、中はとんでもなくデカいらしく拙者一人が余裕で入れるのだとか。いやはや、まこと不思議な処、異世界なり。


 さっと支度を済ませたリリデル殿と一緒に宿場を後にする。

 拙者は一刻も早く飯を食いたかったのだが「アイテム屋さんの方が近いのら! 道すがら見ていくのら」とリリデル殿に押しきられてしまい、先に道具屋へ向かうため大通りを一本裏へと入った。

 暫く歩くと、裏通りにもかかわらず沢山の人でごった返している一軒の店が目に入った。


「す、すごい人でござるなっ」


「流石人気店なのらっ! このお店、色んな国の人も訪れる有名店なのらっ」


 嬉しそうに店を見つめるリリデル殿。「早く入るのらっ」と言って小走りで一人、人混みの中へと入っていく。


「り、リリデル殿っ! はぐれるのでござる、ま、待つのだっ――」


 しかし時すでに遅く、小さきリリデル殿の姿はあっという間に見えなくなった。

 後を追いかけ店に入っても良いのだが、特段欲しいものがあるわけでもなし。入れ違いになっても困ると思い拙者、店のすぐ近くで待っていた。

 

 混んでいるから時間もかかるだろうと覚悟していたのだが……。ものの数分でリリデル殿が外へと出てき時には拙者、思わず二度見してしまったのである。しかも解りやすい程にガックシと肩を落としているところを見ると……


「あー、リリデル殿。お目当ての物がなかったでござるか?」


 恐る恐る声をかける。


「ま、マルさぁ~ん。夢限鞄ガマトートなかったのらぁー。そんなレアアイテム置いてるわけがないって怒られちゃったのらぁぁ」


 拙者の懐に飛び込むようにして抱きつき、泣き出してしまった。

 ――この状況、せ、拙者が泣かせてしまったように見えぬか? 違うのだぞ? 断じて拙者が泣かせた訳じゃないのだぞ。


「これこれ、小さな子を泣かせちゃいかん」


 案の定というか、予想通りというか、そんな言葉が背後から聞こえてきた。

 訳を説明しようと振り返るに、目の前には杖を持ったおじじさんが立っていた。銀の髪に片方の目には眼鏡、髭は胸くらいまで伸びている。


「ちっ、違うでござる! 拙者が泣かせてしまったわけでは――」


「ふぉっふぉっ。わかっておるわい。ちょっとした冗談じゃのぉ。これ、そこの妖精さんや。お前さんが言うとった夢限鞄ガマトート、持ってはいないがどうにか出来るかもしれんのぉ」


 その言葉を聞いたリリデル殿はパッと顔を上げ声を張り上げる。


「ほ、本当なのらっ?!」


「ワシだけの力ではどうにも出来ないが――」


 そう言っておじじ殿は拙者へチラッと視線を向ける。正確には、拙者の腰袋にだ。


 話を聞きたいならついてこい、と言っておじじ殿は町外れの方へと歩き出す。

 

 流石に怪しいか、と悩んだのだがどうにもあのおじじ殿が気になる。拙者の背後を意図も簡単に取り、隙だらけのように見えて全く隙がない。


「仕方がない。行くしかなかろう」

 

 リリデル殿の手を引き、おじじ殿の後をおった。

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