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侍、一体何者だ?

「頼もうっ!! 拙者、侍の与太丸と申す! こ度、拙者が倒した魔物、如何ほどの価値があるのか見てもらいたいっ!!」


 勢いよく戸を開け、声を張り上げる。


「まっっ、マルさんっ!? な、何やってるのら! そんな大声出さなくていいら、ここは僕に任せるのらっ」


 顔を赤くし、小声ではあるが強い口調のリリデル殿。同時に拙者の着物の裾を盛大に引っ張りおった。


「うぉっとと、……何をそんなに怒っておるのだ? 物を頼むときは自分から名乗るのが礼儀。小声で話しては失礼になるでござるぞ!」


「そんなこと、この世界ではやらないのら! とっ、とにかくっ!! 目の前にいるお兄さんが受付なのらっ。さっきの宝珠とかを渡すのら」


 拙者の着物を引っ張り前へと歩き出す。と、同時に、店の中にいる者達からの視線が拙者達に向けられた。


「おいおいおい、なんだよあれは」

「なんだぁ? どんな魔物を倒したってんだよ。あんな貧相な身なりじゃ、F階級がいい所なんじゃねぇの~?」

「あっははは! ちげーねぇ!! 布切れ一枚を体に纏ってよ、装備もまともに揃えられねぇのかよ」

「おいっ! 俺らが見てやろうかぁー」


 なんと口先だけの奴らよ。

 ぶつくさ言っておるが、どいつも大した力の持ち主ではないな。拙者がこんだけ言われても、刀を握ろうとすら思えぬ。

 それ程に弱き者達はほっておいて、と。

 目の前にいるこやつ、なかなかにいい殺気の持ち主であるがこの者がここの店主か?


「お主、いい気構えであるが、この店の店主殿であるか?」

 

 身長は拙者と同じくらいであろうか。しかし、なんともガタイがいいその男は、ふんっと鼻をならし拙者を見た。


「そうだ、ここのオーナーのダナトって者だ。……んで? ヨタマルさんよ、一体どんなものを拝ませてくれるんだ?」


「その前に一つ、清き眼にて然りと価値を見定めてくれるのか?」


「清きまな? おい、あんた! 一体何のこと言ってんだよ」


 怒り顔の店主であるダナト殿を見かねて、リリデル殿が声を挟んだ。


「ごご、ごめんなさいなのら。多分、マルさんはいかさましないで、ちゃんと見て欲しいって言ったんだ思おうのら」


「ああん?! そんなことを俺に言ったってのか。俺はな、この道30年っ! 誇りもって買い取りやってんだ! いかさまなんて誰がするか!」


「ならば、安心して任せるでござる」


 ふっ、異世界とやらにも中々に善き気構えの者もおるのだな。

 着物の懐へと手を伸ばし、魔物から頂戴した品々を台へと置いていく。


「まずはこの毛皮。それに牙が2本と爪が10個。あとは……」


 ゴロンっと音をたて、光る石もとい宝珠を台へと置いた。

 うむ、これで全部であったな。肉は拙者達で頂く故、ここには出さぬでござるぞ!


「以上でござる。して、この品々はいくらになろうか?」


「……」


「むっ、聞いてるでござるかっ? 店主殿? 店主殿っ!!」


「ハハハ、おいっ……何の冗談だ? まさかとは思うが。――倒した魔物の名前、覚えてるか?」


 冗談っ? 

 何故そう思われてしまったのだ。やはり拙者の声が小さかった故、本気と思われなかったのか?


「冗談ではござらん。確か、こやつの名前はジェネラルベアーであった!」


「「「じぇ、じ、ジェネラルベアーだとぉーっ!??」」」


 店中の者が一斉に大声をあげたため、思わず耳を手で塞いでしまった。それでも耳がキーンってなったのでござる。「まさか、嘘だろ」とか言いながら、店主殿は宝珠を手に持ち、虫眼鏡のようなもので真剣にそれを見ていた。


「ま、間違いねぇ! この大きさに輝き、そして何よりこの魔力量! 間違いなくジェネラルベアーの宝珠だ」


 店主殿の言葉を聞くや否や、皆が一様に口をあんぐりと開け、シーンっと静まり返った。


「なっ何か問題であったかっ!?」


 その反応……拙者、何かまずいことでもしてしまったのか。まさか、倒してはいけない魔物であったというのか。


 店主殿はバンッと大きな音を響かせ手を台へと振り下ろす。その手が若干、震えているのは何故であろう。


「も、問題なんてもんじゃねぇ! ジェネラルベアーっといえばA階級の魔物だぞっ!? そんな魔物の買い取りなんて、ここ数年なかったことだ!! お前っ、本当に倒したのか?」


「本当なのら! マルさんが剣でちゃちゃーっとあっという間に斬っちゃったのら! 僕、目の前で見てたのら!!」


 リリデル殿は嬉しそうに身振り手振りを交えて話だした。始めは店主殿だけであったが、気づけば店にいた者の殆どがリリデル殿を囲み、話を聞いている始末。


「嘘だろ、一人で倒せるものなのかっ?」

「人族じゃ、まず無理だ。せめて竜族のお貴族様とかなら」

「ってかコイツ、何者だよ」


 なんて話し声が聞こえたかと思うと、再び皆の視線が拙者を射抜く。なんだか居心地が悪くなるでござる。早く交換を済ませ、宿にむかうでござる。

「して、店主殿。いくらほどになるのだ?」


「あ、あぁぁ。すまん、そうだったな。全部買い取りとなると――」


 言いながら席を外す店主殿。

 戻ってきたときにはパンパンに膨れた麻袋をその手に持っていた。


「占めて10万ゴールドだ。内訳は、」


「いやいや、拙者達急いでいる故、詳しい話しはまた後日。では、リリデル殿! 帰るでござるぞ」


 ズシリと重い麻袋を受け取り、人集りの中心にいたリリデル殿を半ば無理矢理抱えあげ、拙者はそそくさと店を後にした。

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