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侍、召喚される

のんびーりゆるーくな旅物語です


「あなた様も聖剣の騎士様……、ですか?」


 そう聞いてくるのは拙者の前に立っている娘さんであった。困惑した表情でこちらを伺うような上目遣いに、着物を何重に着こんだらそんなに末広がりになるのかという奇天烈な格好。おまけに聖剣? きし? 一体なんの事を言っているのやら。


「拙者、侍の与太丸よたまると申す。どなたかと勘違いされておろう」


 なんとも怪しい奴――。

 この娘さんといい、さっきの珍妙な声といい、何がどうなっておるのだ。


 拙者、先刻まで行きつけの茶屋で団子を頬張っておった。それは旨い桜団子、一口頬張りもう一口と口を空けた瞬間、眩しい光りに包まれ不覚にも目を固く瞑ってしまったのだ。

 光が落ち着き次第目を開けたが、目の前は一面真っ白。茶屋も団子も消え、何もない真っ白な居室にいたのだ。そしてどこからともなく声が響いてきた。


「我、召喚神ウルゴリーヌ。召喚の儀により貴様を召喚する。我は神……ひれ伏せよ!」


 突然の声に拙者、身動きをとれなかった。まぁ、ひれ伏せなど命令されても絶対にしないのであるが。少し腹が立ったので声がする方を睨むにとどめたのである。


「おーっい! 僕神様って言ったでしょっ? そ、そんなに怒んないでよー。ちょっとした遊び心なんだからさ。スマイル、スマイル~」


「すまいる? なんの事でござる。拙者、関係ない故帰らせていただくぞ――」


「あっ、待って待って! そ、そっか、君の時代にはスマイルなんて言葉はなかったね。ごめん、僕の勘違いっ! それにほらっ、君呼ばれててね。それを伝えに来たんだよ~、僕いい人でしょ~? 」


「呼ばれる? 拙者がか? して、誰にどこで呼ばれておるのか」


 声だけでいっこうに姿を見せん其奴の言うことなど、気にするだけ無駄と放っておいても良かったのだが。つい、返事をしてしまった。


「それはねぇ、言っちゃいけない決まりなんだよ……残念」


「――拙者、帰らせてもらう」


 後ろへ振り返り一歩踏み出すなり、「ごごごめんねっ。ほ、ほらっ、お詫びにね、良いものあげるから!」などとほざいておった。しかし、そこで拙者の勿体ない根性が頭を出した。


「むっ、何をくれると申すか」


「へへへぇーっ! やっと話を聞く気になったねぇ。良いものっていうか、それを君に決めて欲しいんだ。どんなものでも良い、君が欲しいと思う三つの物を。……えーゴホンっ! 改めて、汝に問う。汝が欲しい三種の神器とはなんだ!」


 三種の神器? なんたる愚問。答えは明白であった。


「――米っ! 味噌っ! 醤油っ!」


「……え?」


「……むっ?」


「えぇええー? えっ、いや本当にそれでいいの? えっ、食べ物だよっ?」


 コクりと頷いた。二言はない。いかんせん、拙者は今腹が減っているのだ。それに米など拙者には高級過ぎて滅多に手が出せぬ代物。


「は、ははは。普通、お金とか能力とかさ。それを……米って。ま、まぁ、個性だよね! うん、個性! じゃあ、あとは僕からのサービスってことでさ、色々つけておくから」


 そう言いつつ付け加えるかのように「……反則級のレアアイテム持たせちゃおっと」とか訳のわからぬことを言っていたが。


 その声が聞こえるなり視界がぐるぐると回り、またしても目を開けていられなくなってしまった。「異世界ライフ、楽しんでねぇ~」聞こえてきた言葉はこれが最後だった。

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