【9杯目】機甲騎士団➀
ちょっとテイストを変えてみました。
完全オリジナルストーリーです。
タイトルの通り、機甲騎士団にスポットを当ててみました。
今日も店を開けるとしますかね。
っと、準備をしていると兵隊の一人に呼び止められた。
「…お前、雪宮千冬か?無事とは聞いていたが」
「そうか、その服……機甲騎士団の制服か。所属を聞いても?」
「私は戦車乗務員だ。お前、特務狙撃兵だったよな?」
「ああ、そうだよ。しがない鉄砲玉部隊さ。で、今日は?」
「今のお前は国付き傭兵だったよな……ならいいか。連携訓練の前打ち合わせだ。
今日は簡単な内容だからな、帰りに寄らせて貰う」
「ああ、わかった。一人か?」
「いや、もう一人連れてくる。では、また」
そう言うと去っていく。軍靴の音を立てて。
「………と、いう事がありまして、あの席は予約です」
「そうかそうか、千冬嬢ちゃんの昔話が聞けるかの」
「なんじゃ、面白そうじゃな」
「何も面白いことはありませんよ。それと『嬢ちゃん』ではありません」
いつものやり取りが行われる首都の一角のしがない酒場。
そんな場所に軍服の男と…この場に似合わない華やかなドレスの女。
「千冬、来たぞ」
「いらっしゃいませ、こちら(テーブル)をお取りしていました」
「いや、お前との話をしたい。カウンターでいいか?」
「構いません。では、こちらにどうぞ」
男が女に席を引いている。
予約席の札は草野が片付けてくれたようだ。
「改めてまして、いらっしゃいませ。バーテンダーを勤めている雪宮千冬と申します」
「あら?店長ではなくて?」
「店長兼オーナーはあの端で飲んでいる甲冑の男、夜叉騎士と申します」
夜叉騎士が鷹揚に立ち上がり、挨拶をする。
「今宵は御来店頂き有難う御座います、当店オーナーの夜叉騎士で御座います。
御用はバーテンダーの千冬にお申し付けください」
夜叉騎士はそう言うと着席し、再度飲み始めた。
「すみません、無愛想なオーナーで。お気を悪くしていなければご注文ください」
メニュー表を広げつつ、謝るように言う。
あの無愛想さえなければ、それなりの男なんだがね。
「私は……このおすすめのスパークリングワインでいいわ、あなたは?」
「私はそうだな、そのジンをロックで頂こう」
お通しのミックスナッツを出しつつ注文を受け付ける。
夜叉騎士の態度は特に気にしていないようで良かったよ。
「承りました。フードのメニューも置いておきますので、よろしければどうぞ」
フードのメニュー表も見ていてくれているようで何よりだ。
さっと飲み物を準備し、それぞれコースターに置いた。
「………どうぞ」
「「乾杯」」
カチンと杯を合わせる。
お互いに口をつけ、杯を置いたところで男に私から尋ねたんだ。
「ところで紹介頂いても?」
「…ああ、そうだったな。今度結婚する予定の人だ。歌い手をしていてな。
売れているんだぜ」
「ん、もう…初めまして、千冬さん。とある劇場で歌い手をやっています。
以前の同僚とお聞きしました。宜しくお願い致しますね」
「そうだ、今日はこの後に劇場で出る予定だったんだが、キャンセルになったんだ。
飲み明かそう。千冬に会ったこともあるしな」
「駄目でしょ、明日も会議があるって言ってたじゃない」
「ふふっ……失礼。早速、尻に敷かれているんですね」
「あ、いや、まあ………そうだな、ああ」
しどろもどろになる男。
それを周りが見ていて微笑む。
そんな楽しい夜だった。
今回は何話続くのだろうか……