【8杯目】日常(?)②
今回でこの話は終わりです。
➀②にせずに上下にすれば良かった。
孫可愛がりの話がしばらく続いた後、背後より忍び寄る影。
「ふわぁあ…おはようじゃ、皆の者」
「『おはよう』という時間ではありませんよ、天月」
「妾が起きた時間のなのじゃから、いいのじゃ。老兵も来ておったか。
おはようじゃの……ふむ、妾にもエールじゃ」
「もう、天月おねーちゃんったら…みなさん、こんばんはです。
千冬おねーちゃん、秋音おねーちゃん、てつだいにきたよ」
天月に続いて草野も来たか。
くーにはもう少し遊びを覚えて欲しいところなんだが。
「こっちは今のところないよ、くー。秋音姉さんのところに行きな」
「わかった。いってくるね、千冬おねーちゃん」
外でテーブルセットしている秋音姉さんのところに駆けていく草野を見送りつつ、
エールをグラスに注ぎ、お通しのナッツを『2セット』用意した。
「なんじゃ、何だかんだ言いつつ用意してくれるんじゃな、千冬よ。
……ぷはぁ、やはり寝起きはこれに限るのぅ」
「まあまあ、言いっこなしじゃて、天月殿。夜叉騎士殿には用意しなくていいのかの?」
「ええ、必要ありません。いつもの様に無しで飲みますので」
「こんなとこに酒場が。丁度いいっすね」
「おお、ここにするか。どうです?」
「おい、行くぞ」
ずかずかと入って来る男たち。酔いが回っているようだ。
辺りを見回した後、セット済みのテーブルへと踏み込んでいく。
客には悪いが、嫌な感じがするねぇ…。
「おおい、店主。酒だ。とびきりいい奴だ!…おっと」
「みゃっ!?」
椅子を準備していた草野はよろめいた男たちの一人にぶつかり、倒れた。
……いや、倒れなかった。
いつの間にか夜叉騎士が草野を抱えている。
夜叉騎士は草野を立たせ、近くにいた秋音姉さんに預けると、男たちに静かに語りかけた。
「此の度は当方の店員が失礼致した、小官は此の店のオーナーで在る。
御詫びに一杯、馳走するが如何か?」
「っ!?……、…っ、………。」
男たちの一人はいちゃもんを付けようとしていた様だった。
そこに機先を制され、夜叉騎士の静かな威圧感に気圧され何も言えなくなったようだ。
「みゃう……ごめんなさい」
秋音姉さんの横で草野も謝る。
これで男たちは何も言えなくなった。
この男たちのなかで一番偉そうな男が言った。
「いや、こちらが悪かった。今回は失礼するがいずれ伺おう。
嬢ちゃん、悪かったな。おい、お前ら、行くぞ!」
「「「は、はい」」」
男たちが帰った後、草野がおずおずと夜叉騎士に尋ねた。
「……よかったの?」
「ああ、良い。気にするな。くーの落ち度では無い」
答えて草野の頭を撫でる夜叉騎士。
気持ち良さそうに目を細める草野。
…ああ、甘いなぁ、私には厳しいくせに。
先程とは別の男たち、女たちが入って来る。
いつもの奴らだ。
「千冬の姉貴、来ましたぜ。エール3杯よろしく!」
「千冬お姉さま、こちらの席でよろしい?あまーいカクテルをお任せでお願いするわ」
「私はお前らの姉貴でもお姉さまでもない!…ああ、わかった、わかった」
こうして、この店の日常は過ぎていく………。
それと、あの男たち。
きっちりと詫びに来た。
草野にも詫びを入れ、綺麗に飲んで帰っていった。
一番偉そうだった男は黒狼騎士団の騎士だったらしい。
そういえば、そのうちの一人がやけに秋音姉さんのことを見てたな?
こんな感じの話を進めて行きたいと考えております。
よろしければ読んでいってみてください。