【7杯目】日常(?)➀
物語の開始となりました。
改めて宜しくお願い致します。
さあ、店を開けるとしようか。
……ん?珍しいな、夜叉騎士がいない。
まあ、いいか。
準備するとしますかね。
「秋音姉さん、今日のメニューは何んだい?おすすめに書くから教えてくれよ」
「もう、書いてあるから大丈夫よー、千冬ちゃん」
「毎回言ってるけど、『ちゃん』はやめてくれよ……そのメニュー表を頂戴。
こっちのメニュー表に挟んでおくから」
店の準備をしているとオーナーが帰ってきた。
何やらいつもより疲れた様子だが、何かあったか?
本人が言うまで黙っておきますか。
「……千冬、ウオッカだ、プレミアム在った筈」
「あいよ」
「其の返事は何とか為らんのか?」
「いいじゃないか、まだ開店していないんだし」
「其れもそうだな……済まなかった、忘れてくれ」
「ふぅん、珍しいじゃないか。こんなの大したことでもないのにさ。
何かあったのかい?」
「ふむ、千冬ならばいいだろう……」
今回の仕事は国家傭兵としての参加したそうだ。
話を聞くに、傭兵の一人を指揮官が制御出来なくて暴走、
夜叉騎士がフォローしたから損害なく切り抜け、
それに対して指揮官がお礼を言っていた時に例の傭兵が突っかかってきた。
それで決闘騒ぎになったんだと。
そこまで聞いて、わかったね。
逆に叩きのめして羨望と嫉妬を受けて面倒になったんだなと。
まあ、予想通りだ。
「指揮官の男には『弟子にしてくれ』、突っ走った傭兵には『次こそは叩きのめす』だ。
面倒な案件を抱えたモノだ…千冬ぐらい素直なれば良いのだがな」
くいっとグラスを空け、一息入れる夜叉騎士。
「わ、私の事を出すな!…とはいえ、居場所は掴まれていないのだろう?」
「其処まで迂闊だと思うか?千冬」
「そりゃそうだだよねぇ……ならいいんじゃないかい?放っておいて」
「…………ふむ、一理ある。問題無しとしておくか」
「千冬、ウヰスキーだ」
「あいよ」
カランとロックグラスに氷を落とし、夜叉騎士のお気に入りの
ウイスキーをグラスに注ぎ、コースターを出した後に差し出した。
…もう迷いはないようだな。
「エールくれ、千冬の嬢ちゃん」
話がひと段落したタイミングで老兵が入ってくる。
本当にいいタイミングだ、まさかとは思うが図っていたんじゃないだろうか?
「私は『嬢ちゃん』という歳ではないですよ。こちら(カウンター)へどうぞ」
老兵が席に向かうタイミングで冷やしたタンブラーグラスを取り出し、
樽からエールを継ぐ。
いつもの場所にグラスを置き、座るのを待つこととした。
「かっかっかっ、儂から見ればまだ嬢ちゃんじゃて。早速ありがとうな、千冬『嬢ちゃん』」
早々、駆けつけ三杯とばかりに口をつけ、半分程飲を一気に飲み干す老兵。
ふぅ、と一息ついた。どことなく表情が明るい。
「景気がいいようですね」
「そう見えるかの?大したことはないのじゃが…儂の部隊員が後方部隊で表彰されたんじゃよ。
出来る子でな。
ああ、息子や孫じゃない、儂は独身だからのう。
贔屓の店の店長から息子を預かったんじゃ。
それは置いての、修復技能がすごいからそれで表彰されたんじゃ」
そう言って目を細める老兵。やっぱり孫を見つめるようだな。
血筋がいないだけにかわいいんだろう。
このパートは1話完結の予定でしたが、長くなってしまった為、
分けることにしました。