【45杯目】贈り物①
「ちわー配達に伺いましたー『13th door』はこちらで宜しいでしょうかー?」
「はぁーい、ちょっと待ってね」
秋音姉さんがいつもの配達員から荷物を受け取る。
私はそれを受け取り、不審な様子はないため、梱包を剥がす。
中から出てきたのは『嵐の傭兵団』宛。
内側の宛先が傭兵団となっているので夜叉騎士に確認を取ったが、簡潔に一言で『知らん』と。
仮にも副長の地位である私が中身を吟味しましょうかね。
「…ん?……んん?何だ?これは」
うおっほん。
変な唸り声をあげてしまった。
宛先のラベルを剥がすと裏にはなんと『雪宮千冬様』の文字が隠れていたのだ。
なんで私宛なんだ?と思いつつも中身を開けていくと入っていたのはタイトなドレス。
まあ、マーメイドドレスと呼ばれる物だな。
黒と赤の二色で上等なシルクを使用した高級感が溢れる意匠だ。
…いやいやいや、これはないでしょ?誰だ、こんなの送った奴。
調べても差出人の名前は見つからない。
しかも自分に当ててみるとサイズもぴったりだ。
謎すぎて、それ以上に手を付けることが出来なかった。
そんな様子を見て、通りがかった天月が揶揄う。
「くっくっくっ、どこの貴族のパーティーに招待されたんじゃ?千冬さんよ」
「さっ、されてないですよ、天月。私も訳が分からないが」
「えっ?パーティー?いいなー私もたまにはそういうところで羽を伸ばしたいわぁ」
秋音姉さんまで絡んできた。
こっちは天月の軽口で言ったパーティーを本気にしている様にも窺える。
物は危険物ではないし使用が出来る物なので、奥にしまい込む。
そうして奥にしまい込むことで私自身も意識に止めず、忘れてしまっていた。
そして数日後。
「失礼します、配達です。『13th door』さん宛に荷物が届いています」
「はぁーい、ちょっと待ってね」
新人らしき配達員が荷物を秋音姉さんに受け渡す。
隣にはいつもの配達員がいて、新人の仕事の様子を伺っていた。
配達員の二人が帰ったところで私は秋音姉さんから荷物を受け取り、それを調べる。
不審な様子はないため、梱包を剥がした。
中から出てきたのは『嵐の傭兵団』宛。
何か前にも同じような…って、よくあるよな、こんなことは。
剥がれかかっていた宛先のラベルを剥がすと裏には『雪宮千冬様』の文字が。
……ん?いや、前にもあったぞ、こんなことが。
消えかかっていた記憶を呼び起こしながら、開封をすると中から出てきたのはパンプス。
ダークシルバーでソールが赤…いや、深紅か。
ヒールは高いな、思ったよりも軽い。
私の足の大きさにぴったりだ。
そして、思い出した前回同様に差出人の名前はなかった。
私は気になって、少し考えてみた。
誰が?何のために?
答えは出ない。
そもそも、私に対する期待には女性的な要素はない、と思っている。
戦闘訓練ばかりで粗雑な性格の私は煌びやかなパーティーに生える様な育ちをしていない。
考えながら仕事をしていると、氷を削っているときにアイスピックを手に刺しそうになった。
おおっと、危ない。
仕事に集中するか。
その前に…気になるから、部下に調べさせてはみようか。
手筈だけ整えておく私。
一旦、贈り物は思考の外に置き、バーテンダーの仕事に没頭する。
ふと気付くと料理が上がってきたのか、芳醇な香りが鼻孔をくすぐった。
『千冬ちゃーん、お料理上がったよー』
「のみもの、おくのテーブルにはこんできたよ、千冬おねーちゃん」
「ありがとうな、くー」
お礼に頭を撫でてやるとくーは目を細めて喜んでいる。
今日はいつもより、店は混んでいた。




