表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ShotBar 13th door 千冬の業務日誌  作者: 夜叉騎士
41/42

【40杯目】夜叉騎士の受難⑤

私は夜叉騎士の帰還を待っていた。

店で使用したグラスを丁寧に拭きつつ、一言も発せず静かに佇む。


店自体は閉めているため、外の灯りは消してある。

この辺りは街灯が多くなく、夜明け前にはまだ若干早い時間のため、闇が一層引き立っていた。


静かだが人の気配を感じ、私は仕事の手を止めた。

その気配は3つ。


その内、ひとりは夜叉騎士だと思われるが、いつもと足音が違う。

違和感があり過ぎる。


少しの緊張と共に入口の幕が上がることを待ち構えた。


「千冬、まだ居るか?」


現れたのは狼系獣人の少年。

それと探しに行った女と追っていた男。


たぶん…と分かっているが、戸惑い返答に窮していると更に問われる。


「分からんのか?」

「…やはり、オーナーですか?」

「分かっているではないか、お前は気配を察せよう」


思わず吹き出して笑ってしまった。

夜叉騎士は不機嫌な顔になるも、それがかえって可愛さを引き立てる。


「此の刻限で在る故、草野は未だ就寝していよう。大声は慎む様にな、千冬」


口調と容姿のギャップが激しすぎる。

なんとか笑いを収め、それぞれに状況の続きの話を求める。


女が中心となって店を出てから今までの状況を説明した。

かなり紆余曲折と荒唐無稽が入り交ざった内容だが、納得はする。


「そう、あれだね。帝国で起きる変な現象は…」

「「「『だいたいクラニオ(長官)のせい』」」」


男と女と私の言葉がかぶる。

一瞬の沈黙の後に『はははっ』『ふふふっ』と笑い声が響く。

憮然となり、ますます顔が険しくなる夜叉騎士。


少し騒がしかったのか、奥で物音がする。

誰かが起きてきた様だ。

足音からしてくーだろう。


「どうしたの?千冬おねーちゃん」


まだ眠いのか目をこすりながら尋ねるくー。


「ああ、まだ寝ていていいよ、くー。うるさくして悪かったね」


そこで見慣れない人物(狼少年姿の夜叉騎士)が居たため、くーは挨拶をする。

人見知りではあるが、挨拶をする丁寧さは秋音姉さんに躾けられた賜物だ。


「はじめまし、て?」


お辞儀ではなく、首を横に傾げる。

知った匂いと姿の違いに困惑しながら。


「…俺だ、分かるか?草野」

「みゃ、夜叉騎士おにーちゃん?

 そうかな?っておもったの…いい『けなみ』だね。さわっていい?」

「うむ、程々で在ればな」


夜叉騎士が近くのソファーに浅く腰を下ろすと後ろから抱きつき、もふもふとし始めるくー。

そのまま寝そうな勢いだ。


「……すーーすーー」


意識した様子もなく尻尾でくーを包む夜叉騎士。

ずり落ちたり倒れないよう、おんぶの様に抱えながら、話を仕切り直す。


「落ち着いたところで、改めて質す。以後の行動は如何するか、だ。

 先ずは調査の日程と場所の選定が必要で在ろう。小官が本来の姿へ復する見通しは調査の結果次第に為ろうか」


男と女が互いに頷き合い、女の方から口を開いた。


「そちらの話ですが、こちらの店の奥に機材を持ち込んで調査をさせて頂けませんか?

 勿論、省の許可申請などの諸手続きは私の方で行わさせて頂きます。ご迷惑でなければですが…」


続いて男が口をはさむ。


「あー実はですね、元々この研究が下りてきたのはそっち(女)の方でしてね。

 私は許可したに過ぎません、試験薬の処分も含めて。

 それに、これにもクラニオ長官が絡んでくると面倒でしょう?」


『あーーー』という納得した雰囲気が流れる。


「此れ以上の関係者が増えぬ事、当方としても僥倖だ。御願いすると致そう」


夜叉騎士はそう結論付けた。

…まあ、そうだろうねぇ。


それはそうと、夜叉騎士が秋音姉さんへの説明をどのようにするか、ささやかに楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ