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ShotBar 13th door 千冬の業務日誌  作者: 夜叉騎士
33/42

【33杯目】千冬の挑戦①

あーー気になるね、くー。


「千冬ちゃん、手が止まってるよ?」


まあ、天月がついて行ったし、なんとかなるか。


「…ねえ、千冬ちゃんってば」

「ん?」

「やっと気づいた。手が止まってるよ」

「…え?ああ、ごめんごめん、秋音姉さん」


おっと、気を付けなければな。

グラス拭きを再開しないと、店を開けられないな。


「そんなに『くーちゃん』のことが気になるなら、思い切って別なことに挑戦して気を紛らわす?」

「はぁ?どんなところから、そんな発想が出てくるんですか。

 大体、これ(グラス拭き)が終わらないと店が開けられませんよ」


「…それなんだけど、この料理、千冬ちゃんがやってみない?

 簡単なものだし、代わりにそっちの仕事してあげるから」


うーん、くーも頑張ってるし、こっちもやってみるか?

なんか毒されてるな。


「じゃあ、簡単なものなら…で、なんですか?物は」

「いいね♪カルパッチョを準備してたの。

 常連のお客さんから先に作っておいてって言われたから、一皿だけ仕上げて。

 後は調味料はかけないでおいてね」


ふぅん、まあそれなら。


「……やってみるさ」


そう答えると、ぱあっと秋音姉さんの顔が明るくなる。

そして場所を私と秋音姉さんそれぞれ入れ替え、台所のまな板の前に立つ。


目の前には材料のスモークサーモン、そして皿と被せる蓋が複数枚置いてあった。

玉ねぎと葉物の野菜については切ってある様だ、ボールに入っている。


「切るぐらいなら問題ないでしょ?刃物の扱いは慣れているし…薄めに切れる?」


危な気のない手つきで斜めに包丁を入れ、薄切りに切っていく。

まあ、これぐらいなら問題ないさ。


「ああ、問題ないよ、秋音姉さん……それで、端切れはどうするんだ?」

「それね、うふふ。まじめに考えなくていいよぉ、味見にしちゃって」


薄く微笑みながらも手慣れた感じにグラスを拭き、棚へと戻していく秋音姉さん。

家事全般に関しては誰にも負けないんだよなぁ…運動音痴だけど。



一通り、身を切り終えたところで次の作業だ。


「次は、と……」

「千冬ちゃん、お皿には円状に盛り付けて、野菜は中央でね」

「あいよ」


数枚並べてみるも、どうも違和感がある。

やり直すか?


「並べるときってどうしているんです?秋音姉さん」

「適当…に?感覚だよ、感覚」


カクテルを作るときに感覚でやることもあるから、言っていることはわからないでもないが…

その感覚を掴めるのは回数重ねた人だけだよ。


一度、切り身をまな板に戻してやり直す。

何度か失敗して円の形が崩れたりしたが、なんとか形になった様子。


……ふぅ、こんなものか?


とりあえず、一枚は完成だと思う。

うんうん唸っていると、改めて声をかけられた、私の横に立って。


「うん、そんなもんじゃない?いいよ、それで。

 後もそんな感じでよろしく、ね♪」


それだけ言うと切れ端の片方を口に入れ、もぐもぐさせながら持ち場に戻る秋音姉さん。

上機嫌に『…うん♪』じゃないよ、ほんと。


そこからなんとか悪戦苦闘しながらも盛り付けが終わり、ほっと一息。

あ、そういえばくーは今頃、どの店にいるんだろうか。


ちょうど作業が終わったのか、秋音姉さんもこっちに来た。


並べてある皿を一枚一枚ざっと見た後、こう言った。


「うんうん。そうしたら、最後の一枚…あっ、残すのは二枚にしようか。

 それ以外は蓋して冷蔵庫にしまってね。仕上げは一緒にやりましょ」


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