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ShotBar 13th door 千冬の業務日誌  作者: 夜叉騎士
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【32杯目】くーの小さな冒険⑤

― 草野視点 ―


「…どうぞ、紅茶です」


ふたつ置かれた紅茶、うちひとつは湯気が立っていなかった。


「草野さんは熱いの苦手ですからね?」

「みゃ、ありがとうございます」


佇まいを正した天月がキルシュに尋ねた。


「……で、改めて聞くぞ。妾たちはどのくらい拘束されそうかの?」

「そうですね…事情聴取とそれに類する報告の提出までですから、そうは長くならないかと」


「対策はどうするのじゃ?」

「今回の事象、特定が出来そうな案件がありまして…裏取りが終われば早々に対策は済みます。

 そうなれば、帰っても大丈夫ですよ」


まだ疑問点が残っている様な顔つきのまま、天月は頷く。

そんな折、ふたたび応接室のドアが開き、大柄の人物が入ってきた。


みゃ、このおじちゃん、みたことがある。


「副長官のアポロニウスだ。この度の件は迷惑をかけたな」


どかっと向かいのソファーに腰を下ろす。


「固くならんでいい、嬢ちゃんにはこっちに菓子もあるぞ」


猛者らしい少し迫力のある笑みを浮かべながら、お菓子の入ったかごを差し出すアポロニウス。

いいの?いいの?と周りを見ながら、草野はおずおずと手をつけた。


「ふん、些細な件の事情聴取ごときに随分と大物が出てきたのう?キルシュ嬢や」

「…ええ、まあ、これには…」


「よいよい、後は儂から話そう。

 そもそも、この件と関りがある押収品については儂が直々に指揮を執ってたんだ。

 関りがあると分かったのはついさっきだがな」

「ふーーん……で?」


キルシュが追加で淹れた紅茶に一口つけ、続きを話すアポロニウス。


「聞きたいのはこれだ。この瓶に入っている液体が何だかわかるか?」


なんとなくみたことがあるのような、やっぱりないような?

答えを出せなく、黙る草野。


「一見はただの液体じゃが、違和感がある力が加えられている様に見えるのう?なんだか居心地が悪いわい」

「この液体だがな、とある世界で見つかったものを界賊が持ってきたものらしいのだ」

「そんな重要な話、妾らが聞いていいと?」

「大丈夫だ、まあ最後まで聞け」


ここで一息ついたアポロニウスは残りの紅茶を飲み干し、話を続ける。


「その賊は『希少なものだ』と言ってな、ある店に売りつけようとした。

 だが、間抜けにもな、落としてしまったんだよ…そして入れ物の瓶は割れてしまった。

 そして、『ヤバい』と感じて、その店から逃走した…まあ、その賊はもう確保したがな。

 それで……」


「みゃあ!そうだ!」


唐突に立ち上がる草野。

珍しくも突然の草野の大声に若干驚きつつも、続きを促す周り。


「えっとね、えっとね。くーのきもの。そう、ころんだときによごれた『きもの』」

「あの店か。ということは、キャリーケースの中じゃな」


女の店員がキレイにしまったのか、畳まれてビニール袋に入れられていた着物は確かに大量の液体が付着していた。


「…では、一旦この着物はこちらで預からせて頂きます、宜しいですね?」


草野、天月共に頷くと、ビニール袋を抱えてキルシュは応接室から退室した。


「天月殿よ、アレはな。

 こちらの研究班が調査したところによると、どうも確率変動させる様な異質の力が働いていてな。

 それが周りに影響を与える様なのだ、他に何かあったか?」

「うむ、それでじゃな…草野の運の悪さがその店から更に際立っていたのは。

 極めつけはこの転移騒動よ。

 草野の力も異質なもの故に異質同士で突然変異が起こってしまったのじゃろう」


目を潤ませて、天月に問いかける草野。


「…くー、わるいこなの?」


一瞬の静寂が部屋を包む。


「あー、そうじゃないんじゃ。うーむ……」


そこで割り込むアポロニウス。


「儂は良い子だと思っているぞ。

 それにな、実際にな、調査班に時系列を調査させると、それが起きた直後からこっちでは急に賊が見つかったり、

 例の液体の内容が判明したりと事態が好転したのだ」

「それは草野君の力だと思っている」


「そうですよ!」


バンッと応接室の扉を強く開けて入ってくるキルシュ。


「こんなかわいい子が悪い子の筈がないじゃないですか!」


むぎゅっと草野を抱きかかえるキルシュ。

猫可愛がりでむぎゅむぎゅと。


……ちょっとだけくるしいです、キルシュおねーちゃん。


それから、アポロニウスおじちゃんと天月おねーちゃんがなんとかキルシュをなだめてくれて、

おしごともおわったので、かえっていいことになりました。

ちょっとだけうるんだめをしてるキルシュおねーちゃんがみえるけど。


あ、キャリーケースはかえしてもらいました。

そして、『きもの』も「液体の分離が成功した」とのことで、あとでかえしてくれるそうです。


― 千冬視点 ―


「みゃ!ただいまー」

「帰ったぞ。酒くれ、酒」


店の幕を開け、Barの方の入り口から入る草野と天月。


「早速の酒を催促ですか、天月。おや?くー、その服は?」

「いいでしょ、ぶきやのおねーちゃんにもらったの」


ドヤ顔と言葉が似合う草野が言う。

あいつとなんかあったか?


「千冬おねーちゃん、おかいものはこれね」


キャリーケースを開け、内容を確認する。

そこに手紙らしきものが。


『くーちゃんに迷惑をかけたので、これで勘弁してください』


ふーん、まあいいか、何があったかは後で探っておくか。


「疲れた。おーい、早く酒、酒」

「みゃ…天月おねーちゃん、だめだよ、のんでばっかりじゃ」


この後で聞いた話は驚きの連続だった。

…が、いつもの日に戻ったかの様に草野の話をゆっくり聞いたのさ。


そして今日も開ける、この店を。

これで草野くーちゃんメインのお話は終了です。

次の話まではまた時間がかかると思います。

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