【31杯目】くーの小さな冒険④
― 草野視点 ―
「……………みゃ、う?ここ、どこ?」
キャリーケースを抱えたまま草野は辺りを見回した。
無機質で近代的な作りの壁の廊下の様だ。
「ぬおっ、うおっと」
天月が転がり込んで来たと同時に黒い靄は消えていく。
なぜいるかと不思議に思いつつも天月に声をかける。
「天月おねーちゃん、どうしたの?だいじょうぶ?」
「うむ、大丈夫じゃ。くーは怪我をしてないかの?」
「みゃ、くーはだいじょうぶなの。それで天月おねーちゃんはどうしてここに?」
首をかしげる草野。
うっ、と内心は思いつつ堂々と答えを放つ天月。
そんな構図。
「た、たまたま散歩で見かけてのう、危ない場面じゃったから、飛び込んだのじゃ」
「えーーふだんのおねーちゃん、そんなことしないよぅ。おもしろがったんでしょ」
「ちょっとはそういう気持ちもあるが…のう。そ、それよりもここは見たことがある気がせんかの?」
「うーーーみゃ?あ、ここ、まえにきたことあるよ、たぶん」
「やはりそうじゃろう。ただ、はっきりと何処とまではわからんがの」
天月おねーちゃんにたたせてもらいながら、きょろきょろみわたしてみる。
どこからか、しったあんしんするにおい?くんくんくん……みゃ、このにおいは。
「こんな所でどうしたんですか?天月さんに草野さん」
「キルシュおねーちゃん!」
「キルシュ嬢!」
同時に叫ぶ草野と天月。
「な、突然どうしたんですか?しかもこんな廊下でぼーっとしていて。何かあったんですか?この本部で」
「えっと、えっとね、キルシュおねーちゃん、あのね、えっとね」
「草野さん、落ち着いて。はい、深呼吸。すーはー」
「みゃ、すーーはーー」
「ん…で、くーが落ち着いたところでじゃ。妾の方から話そうかの」
キルシュおねーちゃんにこれまでのおはなしをする天月おねーちゃん。
あれ?なんでそんなことまでしってるの?
「……と、いうわけじゃ」
「そうですか。この本部はそういう事が起こりにくい様に防護していますが、ホールがここまで出てくるとは。
どうしても処分しきれない押収品の影響かもしれません。長官に言って再度対策を講じなけれ…」
「ちょっと待て、キルシュ嬢よ。先のことも大事じゃが、目先の事も考えよ。妾達はどうしたら良い?」
ちょっと考えるキルシュ。
答えを出したようだ。
「天月さん、要件は受領しました。
けれど、証人としても安全の確保としても来て頂けませんでしょうか?」
「ふーむ、許容範囲内じゃの。妾らはどこに向かえばいいのかの?」
そんなやり取りのなか、草野が控え目に天月の袖を引っ張りつつ質問する。
「天月おねーちゃん、どこいくの?」
「妾にもわからんわ。が、悪いところじゃないじゃろう。多少の不便はあるかも…じゃがの」
「…こちらです、天月さん、草野さん」
通されたのは立派な応接室だった。




