【29杯目】くーの小さな冒険②
団子は落とさなかった、ふぅ。
……なぜ、こんなに妾の方が疲れるんじゃ。
「みゃ、つぎはこっち」
ててててっと向かい出す草野は嬉しそう。
団子がそんなによかったのかの。
店頭にいる女の店員はやる気がなさそうに、何やら部品を磨いている様子だった。
「すみません」
「…あ゛?」
語尾の圧に、草野の肩がびくり。
まあ、そうじゃよなぁ……そうなるよな。
「う、みゃ………こんにちは、すみません」
「ここは武器を扱う店だ。お前の様な者が来るところじゃあないよ。遊ぶんなら他にしな」
「くー、ここにようがあってきたんだよ。『おきゃくさんをざつにあつかっちゃダメ』っておねーちゃんがいってたよ」
「…ぐっ、そしたら何の用事だよ。お使いにしては……」
店員の女はなおも言い募ろうとしたとき、今まで気だるそうに磨いていた何かの部品を落とした。
それを見た草野は自分の身体を顧みずキャッチした、滑り込んで。
よく転ぶ草野だが、実は運動神経は悪くないのじゃ。
転ぶのは運が絡んでいることが殆どじゃしの。
「………あ、あんがとよ。常連のお姉さまの大切な武器の部品だったんだ。助かるよ」
「くー、しってるよ。千冬おねーちゃんのかわりにうけとりにきたの」
そこで女の顔色がさぁー…と変わる。
「え?あ、あの………千冬お姉さまの?」
「みゃ?いってなかった?えっとね、これ、おねーちゃんからのおてがみだよ」
草野から便箋に入った手紙を受け取る。
読み進めていくうちに女の眉間には深い線。
「う、これを最初に受け取ってればなぁ………」
「えっとね、くーがさいしょにだしてればよかったの。おねーちゃんごめんなさい」
深々と頭を下げる草野。
バツが悪そうに店員は言った。
「いや、お前…草野ちゃんが言った通り、客の見る目がなかった。すまなかったな。改めて詫びよう。
で、物はすぐに用意するからちょっと待ってな」
奥に入って行く店員。
草野はほっとした瞬間、疲れてか尻餅をついた。
商品をキャリーケースに詰めて店員は戻って来ると驚く。
「待たせたな。どうした?そんなところに座って」
「ころんだの。おねーちゃんのせいじゃないから…きにしないでね。それとくーはよびすてでいいよ」
店員はきゅんと来るのをぐっと堪えて言う。
「お客さんだ、そうはいかんだろう。『くーちゃん』でいいか?」
「みゃっ!それでいいの。みんな、そうよんでくれるんだよ!」
地べたに座り込みつつも満面の笑みで応える草野。
眩しそうな目で見る店員。
わかるぞ、わかるぞ。
妾も抗うのに大変じゃったんじゃ。
照れ隠しするように草野を撫でる店員。
草野はそれで嬉しそうな気持ちよさそうな顔をしているのう。
「転んで汚れてしまっただろう?ちょっと待ってな。確か親戚用に買ったあれがある筈だ」
「みゃ?」
首をかしげるつつ店員を不思議な目で見つめる草野。
店員は奥に入ると包みを持って戻ってきた。
「…これ、お詫びにやるよ。受け取ってくれるかい?」




