【28杯目】くーの小さな冒険①
たまたま機会があって、出来上がったので掲載します。
「千冬ちゃーーん、手が離せないから、お買い物行ってーー」
「そろそろ、『ちゃん』はやめにしてくれませんかね?秋音姉さん」
いつものやり取り。
…いや、止めて欲しいのも本当だ。
「ねぇ、千冬おねーちゃん。それ、くーじゃだめかな?」
「ん?草野は『おねーちゃん』だから、敬称は違うだろ?」
「みゃ?そうじゃないの。おかいもの、くーじゃだめ……かな?」
外に出ることに戸惑いがあったくーが、か。
珍しいこともあるもんだ。
「そうだな。ん、この内容なら大丈夫だろ。行ってきな。お金はこれだ。おーい、誰か、付いて行ってやれ」
「えっとね、みんなおいそがしいから、くーひとりでいくの」
「ん?ああ、そういうことか………ま、いいか。行っといで。寄り道は少しならいいぞ」
生真面目だから少しは遊んだ方がいいだろう。
秋音姉さんもそれには納得だ、心配してそわそわしているがね。
「くーね、がんばるね!」
珍しく語気を強めるくー。
前にもこんなことがあったような………。
「ああ、いってらっしゃい…おっと、秋音姉さん、ついていかない。忙しいんだろう?」
「………はぁい」
秋音姉さん、しょんぼりするなよ……。
あ、天月、てめえ。
「妾はちと出て来るのじゃ、と」
いつになくすばしっこい。
今日は珍しいことだらけだ。
そういえば、こういう事だけは口を挟んで来そうな夜叉騎士はいないな。
― 天月視点 ―
「えっと、まずはこっちかな?」
ふむふむ、まずは乾物屋からか。
生真面目じゃのう。
あ……。
みゃっ、という言葉と共に倒れる草野。
馬車を避けた拍子に人にぶつかり、その人の振り向いた時の手が顔にクリーンヒットしたようだ。
「大丈夫?」
「ありがとうございます」
謝罪とお礼のやり取りをした後、改めて店に向かう草野。
額が少しだけ赤い。
それでも元気に ててててっ と早歩きで行く。
何度か転んだり、物を落としそうになったりしながらもなんとか店に着いたな。
「みゃ、あ、あの…こんにちは」
草野の挨拶に気づかない店員。
帳面に気がとられているタイミングだったようじゃな。
意を決してもう一度、草野は挨拶をする。
「みゃ!こんにちは!」
「わっ、驚いたよ。そんなに大きな声じゃなくても聞こえているよ、お嬢ちゃん」
「みゃう……」
しょんぼりとしてしまう草野にちょっと慌てる店員。
「あ…いやいやいや、次から気を付けてくれればいいよ。で、用事はなんだい?何が欲しいのかい?」
「これがほしいの。ありますか?」
メモを渡し、店員に物と量を尋ねる草野。
そういうところは優秀なんじゃよ、幼いのにな。
「奥にあるよ。持ってくるから、ちょっと待っててな」
そう言うと店員は奥に入って商品を探しに行く。
ぽつーんと待つことになって、そわそわしてるな、草野よ。
……あ、転んだのじゃ。
あの不可思議な不幸体質は妾でも未だにわからん。
「はい、これだね。お待たせ……転んだ?ああ、誰だ!ここにワックスこぼした奴。ごめんな、嬢ちゃん」
「ううん、くーこそごめんなさい」
商品と共に手渡された串にささったお団子。
「そうだ、嬢ちゃん、これ持ってきな。食べながらでもな」
笑顔と共にお礼を言い、もぐもぐと食べながら次の目的地へ。
……あ、そこは危ないのじゃ!




