【27杯目】奇妙な依頼⑧
引き続き登場します、ヴィクトール氏。
宜しくお願い致します。
「こんなところにこんな穴がある、とはな」
ヴィクトールが唸る。
そうじゃろう。儂も見つけたときに間違えて入った時は驚いたのじゃからの。
「さあ、参ろうかの。酒が儂を待っているぞ「待ってませんよ」」
被せる様にツッコミを入れる少年。
容赦がないのう、もう少し年寄りを労わらんか。
そうして少し歩いているうち、目的地に着く。
こちらに着いてからまだ夜にはなっていないが、空気はひんやりとしている。
「千冬嬢ちゃん、参ったぞ」
店には誰もいない、タイミング悪く出払っているかの?
そこでヴィクトールは何かを感じ取ったようじゃ。
「裏に人の気配がある。店員だろう。呼んで来る、老兵殿」
そうして早足で裏に行き、Barの車輌のドアを開けた。
「失礼する!この店の店員はいるか?」
「「「…………………………」」」
「きゃーー」「(睨み付ける)」「みゃ?」
着替え中だった秋音、千冬、草野の面々。
それぞれ三者(?)三葉の反応。
顔から赤い液体を吹き出し倒れるヴィクトール。
阿鼻叫喚の空間が発生した。
― 千冬視点 ―
しばらくして落ち着き、ヴィクトールは改めて謝った。
「すまなかった、何でもするから許してくれ」
「驚いたけどもういいですよ、ヴィクトールさん。その代わり、たくさん注文してくださいね♪」
恐縮しているヴィクトールに明るく声をかける秋音姉さん。
お姉さんとしてしっかりしなきゃとでも思っているのだろう。
「さて、エールじゃ!千冬嬢ちゃん。ヴィクトール殿もそれでいいかの?」
空気を変えるように注文をする老兵。
それに応えるヴィクトール。
「うむ、それで頼む。メカニック君、娘さんはどうする?」
「私はお茶を頂きます。秋音さんの淹れる紅茶は美味しいと伺っていますので」
「僕はジュースを。今日のフレッシュジュースでいいものはありますか?千冬さん」
少し考えてから答える。
珍しいものも提案した方がいいだろう。
「そうですね、良いのはオレンジですが…変わったところだとグァバ、クラマト、ライチがありますね」
「グァバってどんな感じですか?名前しか分からなくて」
「さっぱり・すっきりした風味で飲みやすいと思います。南国の特産品ですね」
「じゃあ僕はそれにします」
「皆様、承りました。秋音姉さん、紅茶をお願いします。草野はこれを持って行ってあげて」
「はーい」「みゃ、わかったよ、千冬おねーちゃん」
ドライフルーツと塩味クッキー盛り合わせの皿を草野に渡し、飲み物の準備を始める私。
作業をしながら、老兵の話に耳を傾けた。
「で……だ、千冬嬢ちゃん。ことの話をしようじゃないか」
今までの流れを話していく老兵。
なるほど、そういう展開ね。何転もし過ぎだろう。
事実は小説より奇なり、とはよく言ったものだ。
「嬢ちゃん方も飲め飲め。今日は儂の奢りじゃ。ヴィクトール殿も遠慮するなよ」
「頂きましょう。あ、秋音姉さんは程々で」
「なんでそうなるのよ~」
「みゃ!ありがとうございます、老兵さん」
「老兵殿、僕も遠慮せずに頂こう!」
そうして賑わい、夜が更けていく……。
これでこの話については終わりとなります。
神楽坂さんキャラをお借りさせて頂きまして有難う御座いました。
次話はプロットが出来ていませんので、投稿が遅くなるかもしれません。