【26杯目】奇妙な依頼⑦
今回はスペシャルゲスト登場です。
キャラのご使用の提案頂き有難う御座います。
「ぐわっ!」
人が倒れる音とともに現れる人物。
ハルバードを携え高らかな口上と共に登場した。
「義に駆られて参上した!我こそはヴィクトール。貴族の義務により助太刀致す!」
……誰じゃ?この金髪の孺子は。
おお、思い出したぞ。
「老兵殿、メカニック君、待たせたな!人質は私が確保した、もう心配ないぞ!」
「それは感謝じゃ。誠に助かった」
「ヴィクトールさん、ありがとうございます」
「まだ礼には早いぞ、メカニック君。これを片付けてからだ」
ヴィクトールは娘を老兵に預けると相手と対峙する。
自慢のハルバードを構えて。
「往くぞ、ハッ!」
突進するヴィクトール。
手前の男を鉤部で引っ掛けて薙ぎ倒す、次に男数名を柄部で足を払い小突いて次々と気絶させる。
近づく者は蹴りを受け、もんどり打って倒れる。
そうして戦闘不能な状態の者を次々と量産していく。
まさに無双状態だ。
「あ、あ……」
圧倒される首謀者が目に映った。
それはそうじゃろう、この有様じゃあな。
「抵抗する者は容赦しない。しかし投降する者までは手を出さない。抵抗を諦めた者は投降せよ」
決まったとばかりにドヤ顔のヴィクトール。
そんな状況で複数の人間が突入してくる。
今度こそ当局の人間かの?
「五の騎士団だ。全員、その場を動くな!」
次々と気絶している者を拘束していく騎士団員とテキパキと指示を出す団長のレオノーラ。
まさかの騎士団と騎士団団長自らのお出ましじゃ。
レオノーラは首謀者を小突いてから娘に近づいていき、話しかける。
「済まなかったな。犯人は取らまえていたが、証拠を抑える前にこの様な事態になってしまった」
「いえ、大丈夫です。私の部隊のみんなが来てくれると思ってましたから。
それよりもヴィクトール様に寛大な処置を。助けて頂きましたので」
レオノーラはヴィクトールを押さえつけていた。
敵ではない、更には女性には弱い。
ピタリと当てはまってしまったな、ヴィクトール殿よ。
「そうか。それは失礼した……む、貴殿は」
娘に言われてレオノーラはぱっと解き放つ。
ヴィクトール殿よ、ちょっと名残り惜しくしてないかの?
「そうだ、僕は傭兵のヴィクトールだ。レオノーラ団長、久しぶりだな」
「そうだな、あまりの暴れっぷりに別人かと思ったぞ。貴殿がこの場にいるとはな」
「少々縁があっただけだ。無法は許せん」
「であればよい。で、だ」
レオノーラは娘に向き直り、改めて挨拶をする。
堂々たるものだ。
「名乗っていなかったな、私は五の騎士団団長であるレオノーラ・アドラーだ」
「ええ、存じております。お助け頂き、ありがとうございます」
「今回の件において、せめてもの詫びだ。事後処理は全てこちらで行い、報告もさせて頂こう」
「虚偽報告はないのじゃな?」
横から口を出す老兵。
「ああ、誓おう。アドラー家の名にかけて」
「うむ、諒解致した。そこまで言わせてすまんのう。儂もこの娘の親に仁義を果たす必要があっての」
レオノーラは頷くと部下に撤収の指示をし始める。
レオノーラの部下達は次々と連行して行き、去っていく。
そんな中、ヴィクトールは儂に声をかけた。
「これで解決だな、老兵殿。帰るとしようか」
「ふむ………ヴィクトール殿、打ち上げと顚末を話しにとあるBarに行くのじゃが、お主も来るか?
もちろん奢らせてもらうぞ。助けてもらった礼じゃ」
「そこまで言われては……付き合わさせて頂こう。近くか?」
「近くはないがの、移動にはそれ程かからん。行けばわかるじゃろう」
後日、レオノーラから正確な報告があった。
『鋼鉄の淑女』らしくお堅い口調だが、娘には優しい顔も見せていたのが印象的じゃった。
それによると、首謀者は周りに祭り上げられたらしいお調子者のようだ。
周りの奴らが実は他国のスパイで分裂を計っていたとのこと。
そいつらは厳罰に処され、首謀者は当面、首輪をつけられた上で戦場でのただ働きだそうだ。
生き残ればそれで使える、そうじゃなくてもまあいいということじゃろうて。
さて、千冬の嬢ちゃんはこの顚末にどんな顔をするじゃろうなあ。
と、いうわけで共和国の雄、ヴィクトール氏が登場です。
戦闘の文章は初の試みでしたので、派手に出来ませんでした。
知力が足りない。