【22杯目】奇妙な依頼③
タイトル詐欺っぽくなってしまった。
あんまり奇妙じゃないな。
「ふぅ、今回も収穫なしじゃったのう」
エールをグイっと一息で空け、老兵はため息をつく。
「しょうがないですね。代用品を探してみますか?」
そう言う少年。通称はメカニックと言うと挨拶を貰った。
「いやいや、そこは儂が受け持った依頼じゃ。責任持ってやらせて頂くのじゃ。
幸いにして戦は小競り合いも無く、落ち着いているようじゃしなあ」
「そうですか。では、引き続きよろしくお願いします」
「はい♪ご注文のお料理の小魚のフリット、お待たせ致しました」
秋音姉さんが配膳してくる。
取り皿2枚とフォークも添えて。
「この姉ちゃんの料理は美味いんじゃ。喰え喰え」
「あ、はい。頂きます………あちっ、ふうふう……美味しいです、本当に」
「あら、ありがとうございます。丁度いいお魚が手に入ったのよ、良かったわ」
じっとふたりを見つめる秋音姉さん、厨房に戻らないなんて珍しいな。
「ところでどうしたの?お二人さん。難しい顔をして。なんだったら私が相談にのるわよ。
なんてったって『みんなのお姉さん』だからね!」
えっへんと薄い胸を反らす秋音姉さん。
私もじゃないかって?確かにそうだけどさ。それ以外が良いからいいんだよ、私は。
そこでポツリポツリと話し始めるメカニック。
八方塞がり気味の老兵はメカニックに対して咎める様な事は言わなかった。
「……それで、必要な物資が手に入らないんです。あちこち探しても数がなくて」
「そうじゃの。実はもっと簡単に手に入ると思うとったんじゃ。一時期は支給もされておったしの。
最近、使用量が増えたらしく、減っておってのう」
「あらあら。それで……肝心の物を教えて頂いたいませんわ。なんて物を?」
「再生石というものを」「再生石じゃ」
二人同時に回答する。
あれ?それって……………はぁ、私の苦労ってばいったい。
最初に聞いて置けば良かった、ミスだ。
「あれ?千冬ちゃん、それって倉庫に大量にある……」
「そうです、秋音姉さん。あれです。はぁ、しくじったねぇ」
老兵とメカニックが顔を見合わせる。
「どういうことじゃ?」
「聞いての通りですよ、老兵さん。嵐の傭兵団の倉庫にあるってことですよ」
「少量では話にならないんですが」
「あーそれは見てから言ってくれ、少年。きっとご満足頂けるだろうから」
「じゃあ私が案内するね、お二人さん。こっちよ」
秋音姉さんにぞろぞろとついて行く老兵とメカニック。
しばらくすると、ちょっと遠くの方から声が聞こえる。
「ここよ。それでお目当ての物はこれね。探し物はこれであってる?」
「……おお、これじゃこれじゃ」
「量も問題ないかしら?」
「ええ、十分です。これを分けて頂くことは……」
「そのつもりじゃなかったら、連れて来ないわ。好きな分だけ持って行って頂戴な」
「え?いいんですか?好きな量って」
「いつも老兵のお爺さんにはお世話になってるし、気にしないで。本当に余ってるんだから」
「対価はお支払いしますので、よろしくお願いします」
「そうね、通常の相場価格よりは安くしてあげる。ただ……」
「「…ただ?」」
「また二人でお店に顔を見せに来てね♪」
「カッカッカッ、これは一本取られたわい。もうひとりいるんじゃが、連れて来てもいいかの?」
「ええ、是非!楽しみです」
話はまとまった様だな。
秋音姉さんは団で経理業務やってるし、値付けは問題ないだろ。
次でこの話は終了になります。
これぐらいを継続して行ければ、と。