【21杯目】奇妙な依頼②
続きです。
今回はスペシャルゲストはいません。
「珍しいですね、言い澱んで。何かあったのです?」
こちらから聞いてみた。
もううちの部隊とは懇意の仲だしな。
「特定の物資が揃っていないのじゃよ。うーーむ、千冬嬢ちゃんのルートも頼ってみるかのう」
「こちらも傭兵団ですから、そちらのルートとあまり変わり映えしないと思いますが…」
「現在の所属はそうじゃが、おぬしは元軍属じゃろ?そっちのルートも期待してみるのじゃ」
「軍の正規ルートは使えませんが、ね」
「よいよい、駄目元じゃ。動くのは明日じゃから、飲み終わったら帰って伝えてくれると有難いのう」
ふぅ、とため息の少年。
「しょうがないですね、お姉さんには伝えておきます。また来ますからサボらないでください」
「なんじゃ、信用ないのう。残念じゃ」
とは言っても笑ってるな、老兵は。
お互いに信頼しているから言い合えるんだろう、歳の差があっても。
それにしても老兵が私に依頼なんて珍しい、というより奇妙だな。
何か特別なことでもあったか?
約束をした翌日、時間通りに現れた老兵。
こういうことでは時間を守るんだよな。
本人曰く『こういうことが生死を分けるんじゃ』とのことらしい。
そういえば何の物資が足りないか言ってなかったな。
「早いのう、千冬嬢ちゃん。まごまごしとると酒が遠ざかるし、さっさと参ろうかの」
「またうちで飲むつもりですか。こちらは有難いですが、たまには帰ってみてはいかがです?
それから、今日は特に『嬢ちゃん』は止めてください。紹介しませんよ?」
「あいたっ、痛いとこ突くのう、じょぅ…千冬殿は。帰るのは帰るぞ、飲んだ後じゃがの」
カラカラと笑う。
だから憎めないんだ、この人は。
さて、行こうかね。
「さて、まずはここじゃな。前にも来たが、千冬じ…殿と一緒だと対応変わるかの?」
本当に大丈夫か?この爺さん。
もし言ったら、本当に紹介してやらんぞ。
「いらっしゃいませ、クリア商店帝都北方支部です。どんなご用ですか?」
エプロンをつけた若い女性が店頭に出てきて挨拶をする。
この店でのいつもの光景だ。
「私は傭兵部隊『嵐の傭兵団』所属、雪宮千冬だ。用件は隣の老兵に聞いてくれ」
「儂じゃ儂。ちょっといいかの?嬢ちゃん」
老兵は店員と在庫を見に行く。
自分は……ぽつーーんだ。
おーーい、紹介したのは私だぞーーー。
「えっと………どうでしょう?雪宮様、こちらでお茶でも飲みながら待たれては」
「そう、するか。こちらは用件ないしな」
新人らしき店員さんに連れられて、奥でゆっくりとする。
まあいいか。こんな日もな。
それで何軒か行ったんだが、収穫なし。
それも人脈総動員して、だ。
あんまり詮索する気はないんだけど、何なんだろうな?必要な物資。
今回の話は1~2話で終わると思われます。
別件ですが、スペシャルゲストのちゃんとした話を書く場合は諒解を得て、
文章の事前確認をお願いすることになります。