【20杯目】奇妙な依頼➀
新しい話になります。
今話はちょい役でスペシャルゲスト登場です。
とある日、開店前の出来事。
「すみません、老兵と名乗っている方がこちらにいらっしゃいませんか?」
眼鏡の少年がそう尋ねて来たんだ。
見かけ12~15歳ぐらいだろうか、その割には落ち着いているが。
「いらっしゃいませ、その方に何のご用でしょうか?お客様のプライベートのことですので、
私から話をすることはできませんが……」
「あ、すみません。私は老兵と同じ部隊で道具や機械の整備を担当している者です」
「そうでしたか。ああ、以前に老兵さんが仰っていた表彰受けた方でしたか」
「あれは…まあ。大したことでは」
ん?ということはもっと歳が上か?
「ご用件は分かりました。しかし、開店しておりませんので老兵さんはいらっしゃっていません。
いらっしゃるまで、こちらでお待ちになりますか?」
「あ、はい。でもまだお酒は飲めませんので……」
あら、見た目通りだったのか。
ん、じゃあ………と。
「今日は紅茶、オレンジ・アップル・パイナップル・トマトの各ジュースがあります。
如何致しましょうか?」
「じゃあ、アップルジュースでお願いします」
「承りました」
ささっとグラスと氷をを用意し、ジュースを注いでいく。
「失礼致します、こちらをどうぞ。それではしばらくお待ちくださいませ」
「はい、ありがとうございます」
お、あそこのテーブルにいるのは………。
「次、くーちゃんの番だにゃ」
「みゃ、じゃあひくね。んーーつぎはにゃにゃやちゃん、どうぞ」
豚のしっぽとはなんと懐かしい。
こっちにもジュースを持って行ってやるとするかね。
「トランプかい?ほらよ、ジュースの差し入れだ。そこのお嬢ちゃんも。
まだ店を開けるには早いし、ゆっくりしてきな」
「ありがとうございます、千冬おねーちゃん」
「にゃにゃやが偉いこと、よくわかっているのにゃ。いただきますなのにゃ」
へぇ、とばかりに覗き込む少年。
「これは何というトランプのゲーム?あんまり遊ばないから知らなくてね」
「そこのおにーちゃん、これは『豚のしっぽ』というにゃ。おにーちゃんもやるかにゃ?」
「トランプか。儂もよくやったわい」
ひょいと顔を出す老兵。
少年のお待ちかねの人物だ。営業時間前に来るなんて珍しいな。
「いらっしゃいませ、こちらにどうぞ。この時間に来られるとは珍しいですね」
「用事が意外に早く終わってのう。誰かいるだろうから寄ってみたのじゃ」
「おじーちゃん、こんにちは」
「こんにちはだにゃ」
「くーちゃん、にゃにゃやちゃん、こんにちはじゃ。挨拶出来て偉いのう」
「ところでお待ちの方がいらっしゃっていますよ」
「知っとるよ「数日も空けて、どうしたんですか?」」
少年が遮って話す。
「なんじゃ、まずは落ち着くのじゃ。ほれ、ジュースでも飲んで」
「そうですね。すみません………」
一口、二口とつける。
「お、美味しい」
「このBarでのジュースはフレッシュですから。ご好評頂いています」
「千冬。この少年が以前言っていたメカニックじゃ。若いし有望じゃな」
「……改めて宜しくお願いします。えっと、千冬さん」
「はい、宜しくお願いします。ところで用事は話さなくていいんですか?」
「はい、落ち着きましたので、ここ辺りで」
「わかっておるよ、物資の件じゃな。粗方は揃っておるがの……」
どうも懸念があるようだな。
今回は老兵をメインにしていく予定です。
宜しくお願い致ます。