【19杯目】機甲騎士団⑪
今回は短めです。
「出所不明な命令とはいえ遂行出来ず、おめおめと戻って参りました、ニヘル団長」
男の、ニヘル団長への最初の言葉はこれだったな。
中々の忠誠心だ。
私には無い物だな。
「いや、いい。お前が戻ってきただけで。帝国の損失を防げた。
パンツァーロード将軍閣下、貴官にもお手数をおかけした。感謝する」
「私ハ見過セナカッタダケダ。若カリシ頃ノ私ヲ見テイル様デナ」
そういえば、どうしてパンツァーロード閣下はここに来たんだ?
男は呼んだが、閣下は呼んでないのにな。
「ニヘル団長、私ハ貴官ニ相談ガアッテ参ッタ。コノ者ヲ小官直属ニシタイノダガ………
ソノ交渉ニ来タノダ。本人ト上司ヘトナ」
「ニ、ニヘル団長」
男が狼狽する。
事前に聞いてなかったことは、これで分かるねぇ。
「ふむ……惜しい気はするが、借りもある。今後の部隊連携も楽になる。
いいだろう。今回はこれで貸し借りなしだ。結果的には帝国のためになるだろう」
「卿ノ寛容ナ対応ニ多大ナル感謝ヲ。次ニ貴官ダガ……」
パンツァーロード閣下は男へと振り向く。
「私としては身に余る光栄です、閣下」
「やったじゃないか。昇進、おめでとう」
「千冬。私のところでも直属だったぞ」
ニヘル団長から圧力がかかる。おお、怖っ。
「じゃー宴会だね。店の奢りで」
「何でそうなる!ジェレミア。宴会は賛成だがね」
「我々ハ失礼シヨウ」
「そうだな、将軍閣下。ジェレミア、明日の定例訓練に遅れるんじゃないぞ」
「………へいへい」
女が涙ぐみながらも微笑む。
男は女を宥める。
私の部下たちが「乾杯!」「おめでとう!」と口々に叫び、笑いあう。
夜叉騎士はカウンターの端に座り、静かに盃を掲げる。
そんな楽しい夜となった。
これは余談だが、歌姫の弟とその家族は夜叉騎士が秘密裏に部下を派遣して、
安全を確保していたらしい。
言えよな、そういうことは。
それから、うちのBarに常連が増えることとなった。
機械仕掛けの男と歌姫の女だ。
決まったテーブルに座り、いつもべったりだ。熱は冷めない。暑苦しい。
今日も来ている。
「「あの日の夜に乾杯」」
終わった……。
続きすぎてどうしようかと。
次は雰囲気を変えます。
※あくまで予定