【16杯目】機甲騎士団⑧
ようやく機甲騎士団の話の終わりが見えてきました。
さて、後、何話かな?
「この様な姿で恥ずかしいが、お前なら偏見なく接せると思ってな」
そう言って、自嘲気味に笑いかける男。
下半身と右腕が機械に置き換わっている。
例の機甲騎士団の戦車部隊の乗務員だった男だ。
「お前、その姿……ヘマしたな」
「ああ、拒否できなかった。立ち回りが下手だった代償だな。
最新兵器部隊に配属されて有頂天だった報いかもしれんな」
ここで意外な人物が口を出す。
「貴官ハ誠実デ優秀ナ軍人ダ。ニヘル団長モ一目置イテ居ル。
中心ニ近ク清廉ナ分、足元ヲ掬ワレタ。タダソレダケノ事ダ」
パンツァーロード閣下だった。
事情はある程度、承知しているらしいな。
「伯爵閣下、よろしいでしょうか?」
「構ワナイ、申シテミヨ」
「今回の件、事の経緯と目星はついているのでしょうか?」
「それについては小官から言う。閣下の承諾は得ている、千冬」
男が経緯を語り始めた、あの女のことも含めて。
なるほどね…そういうことか、理解理解。
ある程度、答え合わせの様なものだけどね。
情報を照らし合わせれば、猿でもわかるさ。
ただ……。
「私は死んだことになり、伯爵閣下の部隊に新人として配属されるだろう。
そうしないと閣下にも害が及ぶしな。
……ただな、千冬。どうしてもやっておきたいことがある。
それをお前にセッティングして貰いたいんだ。報酬は………そうだな「待った」」
私は話を遮る。
「この件に関わったのは私の意思ではないとは言わないが、
傭兵団団長である夜叉騎士の意向でもあるんだ。
何やら団長は今回の件の臭いを少なからず嗅ぎとっている様だ。
報酬は要らない。最後まで面倒みるよ、何したらいい?」
パンツァーロード閣下が頷く。
「千冬殿ノ上司、夜叉騎士殿ノ評判ハ耳二スル。新進気鋭ノ傭兵ダトナ。
任セテミテハドウカ?」
「それでは……」
さ、締めといきますか。
こうまで昼は働きたくないからな、知人のためとはいえ。
早々に終わらせて昼まで惰眠を貪りたいとこだね。
「秋音姉さん、帰ったよ。あいつには奢ったかい?」
「あら、千冬ちゃん。その方なら今、帰ったところよ。用事があったの?」
「いやいや、そうじゃないんだ……あれま、珍しい、こんな時間に」
カウンターに座ってお茶を飲んでいる天月。
あまりにも珍しい光景にたじろぐよ。
「妾がいて不思議かの?千冬よ」
「いや、そうじゃないが……あの女はどうしたんだい?」
「今夜はここで飲みたいそうじゃ。今は別の者を護衛にしとるぞ。
なんじゃ?夜叉騎士の許可は取ったのじゃ。文句は言わせんぞ」
「……そうか、ならば丁度いい。私も用があるんだ」
簡単に役者が揃ったな。
なんだ、動こうと踏ん張る必要はなかったか。
あ、そうだ。夜叉騎士に報告しなきゃだな。
「………と、言う訳です」
「うむ、千冬のやりたい様にせよ。引き続き全ての責は小官が取る」
よしよし、全ての布石が完了。舞台はbarだしな。
そうは言っても私が何かするわけじゃないんだけどね。
暴力沙汰になっても私や夜叉騎士がいるし、問題ないでしょ。
大体は予想がついていることでしょう。
この後も。
でも、読んで頂けると有難いです。