【13杯目】機甲騎士団⑤
今回は視点が変わります。
千冬の日誌ではないかって?
気にしない、気にしない。
そういえば大丈夫だろうかな?主に天月と相手する方が。
― 天月視点 ―
なんじゃ、遠目で監視しているだけかの……つまらん。
「あの…いつもすみません、天月さん」
「よいよい、妾が勝手にやっていることじゃ。
……ん?あれは。そうじゃそうじゃ、黒獅子騎士団の若造じゃ」
少し虚勢を張って部下に指示する青年騎士じゃ。
そうそう、あれあれ。
暇だし揶揄うとしようかの。
「頑張っとるようじゃの、レオンハルト」
「!?…誰だ!」
「妾じゃよ、妾。一緒に闘った天月じゃ」
「お前か!確かに夜叉騎士殿の『嵐の傭兵団』とは共闘したが、お前とはしてない!
……夜叉騎士殿は元気にやっているか?」
「いつも通りじゃよ。にしても、どうしたんじゃ?何やら物々しいの」
「どうも不審な出撃命令が……あっ」
迂闊じゃのう、若い若い。
「いや、こちらの事情だ。詮索するな」
「そういえばおかしな出撃命令が来とったのう、こちらにも」
「何!?……ええい、仕方ない。で、どうした?その命令」
いやあ、若い若い。
が、潔さもあるの。見どころありじゃ。
「正式な命令じゃないと突っぱねておったな、千冬が」
「そうか、あの時の赤髪の女性か。帝国の事情に詳しい様だし納得だな。
他には何かなかったか?」
「知らんのう。妾は所詮、居候じゃ」
とぼけておくが吉じゃな。
「怪しいが…まあいい。この件は例の騎士団が絡んでいる。
何かあったら、黒獅子騎士団まで連絡をよこせ」
「はいはい、わかったのじゃ。連絡する故、これで失礼するの」
ハッと気付き、妾の連れ合いの女性に駆けていくレオンハルト。
「あの劇場の歌姫さんですよね!?ファンなんです、握手してください!」
妾は女に目配せをする。
女も承知したようだ。
「ありがとうございます。レオンハルト様とおっしゃいましたか。
お仕事、頑張ってくださいね」
「う、うむ!承知した。帝国の治安は私に任せて頂きたい!」
「それは心強い限りです。何かあれば頼らせて頂きますね」
「任された!」
そう言って女が握手すると半分ステップ気味に去っていくレオンハルト。
ううむ、実に若いのう。
が、気になることが一つ。
例の出撃命令に機甲騎士団が絡んでいるとは……のう。
「あ、あのう………」
「あ奴は白じゃ。あんな裏表がない人間に謀など出来はせぬわ。
どうも黒獅子騎士団も関わっておらぬようじゃの」
「ええ、そうですね。誠実なお方でした」
改めて女の家路につくとしようかの。
騎士団の人間と話をしていたにも関わらず、監視の目は続いている。
監視だけなんて退屈じゃ。
そして家に着く。
相変わらず立派なアパートメントじゃ。
ん?どうも周りの圧がいつもより強い気がするのう。
「今日もありがとうございました、天月さん」
「……それはよい。が、今日は妾も泊まるぞ!」
「えっ?」
「なんじゃ、妾が泊まったら都合が悪いのかの?」
「い、いえ。そんなことは……でしたら、お食事も用意させて頂きますね」
「ほう、助かるのう。妾は食わんでも大丈夫じゃが、あった方が嬉しいのじゃ」
「そうですか!じゃあ、入って居間でゆっくりしていてくださいね」
「それは楽しみじゃ!」
ついでに何かあれば、もっと嬉しいのじゃがの?
面白くなりそうじゃ。
天月の視点が1話で終わらないことに驚きを禁じ得ない。
というわけで、次話も天月の視点です。