【12杯目】機甲騎士団④
今回はNPCジェレミアさんの受け答えが多くなっています。
解釈違いにならなければいいな……。
やっぱり鍵はジェレミアか?巻き込まれた当事者として。
店に誘ってみようか。
一杯奢るって言えば来るでしょ、アイツのことだ。
「はぁーい、お呼ばれに来たわよ」
「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」
「なあに?固いじゃない、千冬」
「これが仕事上のスタイルだ。気にするなら奢りは無しにするぞ」
「はいはい、了解」
大人しくカウンターに座るジェレミア。
こいつは鼻がいいからな、すぐに先日の件だと気付いた様だ。
「……で?タダで奢ってくれるとは思えないんだけど、アンタ」
「先ずは一杯どうだ?これは本当に奢りでいい。
夜叉騎士から承諾も貰っているし、問題ない」
「これは…ってことは先があるのね。まあ、貰える物は貰っときましょ。
最初はエールでよろしくぅ」
「承りました」
短く返答して、冷やしたグラスを冷蔵機器から出し、エールを注いで出してやった。
「お待たせ致しました」
「…んぐっ、んぐっ、ぷはぁ。早速だけどさ、何を聞きたいの?千冬」
「そんなにせっかちだったか?ジェレミア。まあ、話が早くて助かるがね」
お通しの甘さ控えめのクッキーを出しつつ、受け答えをしたんだ。
「アレでしょ?例の出所不明の命令ってやつ」
「……そうだ。何か聞いているか?」
「聞いてないよ、『命令を続行しろ』とは団長から言われたけどね」
「……チッ、そうか。あてが外れ…」
「まあ、待ってよ。確かに直接聞いてはいないよ、聞いては、ね」
「……くっ、わかったよ。もう一つだ」
いつの間にか空いたグラスを恨めしそうに見て言ったんだ。
「毎度ありー。ねえ、なんか変わった酒ないの?」
丁度いいのがあったな、そういえば。
ジェレミア、こういうところも鼻がきくのか。
「最近、流通し始めた穀物があっただろ?」
「そうね、確か『米』だっけ?」
「そうだ。米から作った酒があるんだが、飲むか?」
「いいね。じゃあ米から作った酒にするわ」
グラスと四角状の受け皿を用意し、酒を注ぐ。
受け皿にもギリギリまで零した。
「おいおい、こぼれているよ、千冬」
「これはこういう仕様なんだ。受け皿までで一杯になる」
「いい文化だねぇ。じゃ、頂くとしましょ。
へぇー結構芳醇な味と香りだね。思ったより美味しいな」
「不味いと思ったら、店には置かない。特に夜叉騎士が、な」
お冷(和らぎ水)を用意しつつ、答えた。
うるさいからな。ああ、店の酒には。
落ち着いたタイミングでジェレミアから切り出す。
「……で、聞きたいんだろう?情報♪」
「ああ、ちと案件を抱えていてな」
「私が調べたとこによるとね………」
聞いた内容は以下の通りだったな。
・複数の部隊、主に傭兵団に指令が出ていたこと。
・エスコート役は機甲騎士団のメンバーがになっていること。
・機甲騎士団の部隊にも指令が出ていたこと。
・8割方任務は成功していたが、大損害を出した部隊もあること。
「へぇ……そこまでとは、ね」
「ま、そんなもんか。後は自分でやりな、千冬」
「わかった。ありがとうな「千冬ちゃーーん、上がったよー」」
「秋音姉さん、少なくとも客の前では『ちゃん』はやめてくれよ…」
「ぷふっ、『千冬ちゃん』……くくくっ…あはははは」
「い!い!か!!広めたら地獄の底まで追いかけて潰しに行くからな」
「おおっ、怖っ。わかった、わかった。言わない、言わない」
本当にわかっているのか?ジェレミアには逃げ切りされそうだ。
恨めしい目で見つつ思う。
「……チッ、ほらよ。これも奢りだ、喰え」
先程、秋音姉さんが作った鰤と大根の煮込みだ。
「…えっ?いいのかい?千冬」
「ああ、これは私からじゃない。厨房の秋音姉さんからだ。
その酒には合うだろう。姉さんからの助けてくれた礼だな」
「そう?じゃ、遠慮なく……あちっ、美味っ、いいなこれ!」
それはそうだろう。秋音姉さんの食事は美味いからな。
さて、後は……。
さてさて、まだまだ続きそうな気配。
次回はちょっと変えてみます。
業務日誌でもなんでもないな、これ。