【10杯目】機甲騎士団②
続きました。
今回は2話で完結しませんでした。
「あの人を見かけていませんか?千冬さん」
開店準備をしていると一人の女性が訪ねて来た。
ああ、あの時の歌手か。
なんか憔悴しているな?何かあったのだろうか。
「いや、見ていないよ。それこそあの時以来、来てないね」
「……そう、です…か」
項垂れる女。
見た限り、服装・装飾品の類はグレードアップしている様に見えた。
「まあ、立ち話もなんだ。座ったらどうだい?まだ店を開けていないんだ。
ゆっくりとするが良いよ……秋音姉さん、お茶あるかい?」
「え!?いや、そこまでお邪魔するつもりは……」
「まあまあ、ゆっくりしていってね。今、お茶を出すから。他に用事でもあるの?」
「いえ、そんなことは……」
流石、秋音姉さんだな。
取り成すのが上手い、こういうところは見習いたいものだね。
「……で、どうしたんだい?慌てて」
落ち着いたところで、尋ねることにしたんだ。
「えっとですね。翌日、会議があると言ったのは覚えていらっしゃいますか?
その後から彼と連絡が取れなくなりまして。
軍の行動に関わることは話をしてくれないことが多々ありましたが、
今回のように『行ってくる』とも言わずに連絡がつかないことは初めてなんです」
「そりゃあ、軍事機密に関わることもある。今回もそうじゃないのかい?」
女は躊躇ったが、話す覚悟を決めたようだ。
「それが…おかしいんです。他にも紹介して頂いた同僚の方も連絡が取れなくて…
千冬さん!あなたは軍に所属していた時に優秀なお方だと彼も褒めていました。
何かご存知ではありませんか?」
必死に訴えかける女。
うーーん、こういう事には首を突っ込みたくないんだけどな。
「………千冬、調べてやれ」
おおっと、珍しい。
まさか、夜叉騎士から声がかかるとは、どうした?
「…ええと、いいのでしょうか?」
「構わん、小官が責を持つ。同僚で知り合いだったのだろう?助けてやれ」
結局、動くのは私なんですけどねっと。
「分かりました。少々お時間頂きますが宜しいでしょうか?」
ちらちらと女を監視しているらしい人間を見つつ、そう言ったんだ。
「ああっ、ありがとうございます。こういう時にどうしていいか…」
コホンと咳払いをひとつ。
「お願いしたいことが三つある。
1.貴女に人を付けるのを許すこと。
2.この件には私が許すまで絶対に手を出さないこと。
3.結果がどんなことであっても私達に当たらないこと。
いいね?」
「はいっ!はいっっ!宜しくお願い致します。劇場の方には私から言います」
「よろしい。じゃ、今日は仕事がないなら帰りな。それとも今から劇場に言いに行くかい?」
「いえ、今日は帰らさせて頂きます。劇場もお休みで偉い人もいないでしょうし」
「わかった。じゃ、護衛をつける。お…」
「面白そうじゃ、妾が行くぞ!」
「え!?あ、まあ……戦力としてはこれ程優秀な人間はいないが…」
「…あ、あの……」
「ああ、こいつか?天月という仙狐だ。容姿は幼いが大人10人束になっても敵わない。
んーーこうなったら梃子でも動かないし……いいかい?」
「あ、はい。分かりました。天月さん、宜しくお願い致ます」
「あーよいよい、天月で構わぬ。行くぞ!住まいはどっちじゃ?」
……あーーはちゃめちゃになる予感。
自分に出来ることだけするか、情報集めだな。
んーー恋愛が絡みつつあるというのは厳しい。
自分で書いておいてなんですが。
何話まで続くかは作者でも不明です。