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妖魔回帰  作者: 明夢
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河童の相撲2

「この沼に河童が住んでいるんですか」

沼を見るけど僕にはなんの変哲の無いただの沼にしか見えない。

しかも凄い濁っている。

僕にはとてもじゃないけど普通の生き物がこの濁った水の中で生きていられるなんてできないと思う。

そう普通の生き物なら。

だけど妖怪の事をまだそれほど詳しくはない僕にでも河童と言う生き物が普通の、鳥や犬や猫の様な普通の生き物とは違うことは分かる。

そう妖怪とは生き物であり生き物ではないそんな禅門問なものなのだ。

それに妖怪本来ではなく妖怪に回帰した僕でさえ普通の人間じゃないんだ、なら何かあってもおかしくない。

きっと妖術を使って何かしらの事象をおこしているのだろう。


妖怪の術と書いて妖術。

妖怪が使う能力、魔法使いが使う魔法みたいなものだ。

妖怪は自分の持つ妖力を使い術を使う。

生まれもった才質だけではなく年を重ねたり世界の負が強かったり様々な要因により大きくなり同じ妖怪でも妖力の質は違うことはとの事だ。



沼はいくら見ても沼にしか見えない。

でも夜行さんはこの沼が河童の住みかと言っている。

と言うことは何かしらの妖術を使い通常にはただの沼にしか見えないようにしているのは分かるんだけど……僕は目を閉じ精神を集中させ沼だけではなくその周辺も五感を研ぎ澄ませ探ってみるけど…………分からないです。

僕が感じるのは眼前に広がる木々や沼や空、

草や木々を駆ける風の音、鼻腔につく森の優しい臭いと沼の土と泥の臭い、五感で感じ取れるものだけだ。


「さて、何か分かったかい」

夜行さんは目を開けた僕に問いかける。


「すいません夜行さん。何かの妖術が使われているとは思うんですがその妖術の正体が分からない僕にはこれがただの沼としか分からないです」

僕がそう答えると夜行さんは僕の頭をポンポンと叩きながら

「ハッハハ。別に謝ることはないよ。知らないことは別に悪いことじゃないしこれから知っていけばいいんだけなんだから」

夜行さんは無知な僕を怒る事なく明るく言う。


「それにトッくんがただの沼にしか見えないのは別にトッくんがまだまだ未熟だからも劣っているからでもないよ。

これはただたんにこの沼に施させている妖術が凄まじいだけのことさ」

僕が妖怪に回帰してからそんなに月日はたってはいない、つまり僕はまだまだ妖怪の力を得た人間としてはまだまだ未熟だ。

そんな僕に未熟とは関係ないと言うことは夜行さんの言う通りこの沼に施させている妖術が本当に凄いのだろう。


「この沼に施させている妖術は2つ。一つは来訪の選別。

赦し有るもの以外の来訪を禁ずる。」


「つまり河童の許可がないと沼には入れないと言うことですか」

「そうだよ~。と言いたいけどそれはちょっと違うんだな~これが」

「?違うんですか」

「そうだよ~。正解に言うと沼自体には入れるんだよ、まぁ底無し沼だから入ったら最後おっちんじゃうけどね」

夜行さんの言葉を纏めるなら沼には入れるけど来訪は出来ない。

つまり

「沼自体は誰でも入る事ができるけど河童の住みかには入れないと言うことですか」

「ピンポンピンポンだいせ~かい。

花丸を上げようじゃないか。あっ、それとも100点の数字がいいかな」

「いえ。僕はただ夜行さんの言葉を纏めただけなので花丸も100点も貰えません」

「も~トッくんは真面目なんだから~。まぁあそんな真面目なとこがトッくんの魅力の一部だったりするんだけどネ。」

誉められているのだろうか…。

「ありがとうございます」

「よきかなよきかな。素直なとこもまたトッくんの魅力だネ」

夜行さんは頷きながら言う。


「これは境界なのさ」

「境界?」

「そう境界。今僕らが見ている世界と河童の世界を隔てる堺。

だけどそれはコインのように表と裏ではなく表と別の表全く別でありながらも一つとしてあるものなんだ」


境界とは一つの世界の中にもう一つの世界を作りその間を隔て囲うもの。

「だからこそ干渉し侵す事が出来ない、だから入ってもすり抜けるだけ」

「そうなんですか」

「うん。そう。

まぁあ僕には関係ないんだけどネ!」

「夜行さんは河童から許可を貰っているからですか」

「え?僕許可なんて貰ってないよ」

「?」

「?」

「僕達は今から河童の住みかにいくんですよね」

「そうだよ~」

「?」

「?」

「許可がないと沼に入っても河童の住みかには行けないんですよね」

「そうだよ~」

「?」

「?」

僕の理解が悪いのか夜行さんの言葉がまったく分からないです。


「トッくん、トッくんほらほら僕は何の妖怪の回帰だったけかな~」

「ぬらりひょんです」

「そうぬらりぬらりのぬらりひょん。

ではここで問題です。

ぬらりひょんは何する妖怪か~な」

ぬらりひょん。

確か僕が知ってるので

「誰にも気付かれず家に入ってお菓子やお茶を飲んで誰にも気付かれずに帰る妖怪です」

僕の答えに夜行さんはニンマリする。

「ピンポンピンポンだいせ~かい!

いや~嬉しいよトッくんが僕の事について知ってるだなんて嬉しすぎて歓喜極まるってこの事だね」

「それならよかったです」

「トッくんの言う通りぬらりひょんは気付かれず侵入し何かすることについては天下一品なんだ…………そう侵入することに。

僕はぬらりひょんの回帰である以上当然僕もその妖術を使えるのさ。

ではここで更に問題!そもそも家とはなんだと思う」


家。

住む場所、出る場所、帰る場所。

表現にすれば色々出てくる。

でもそんな中で僕が一番思うのは

「家族の居場所、大切で大事な場所、僕はそう思います」

温かで、豊かで、積み重ね記憶し居心地の良い場所。

「良い答えだネ。

うん。そうだね、それも一つの在り方だ。

僕はもその思いは大切で大事なものだと思うよ。

トッくん。その思いは忘れちゃいけないよ」

「はい」

「よしよし。

さ~てさて待ってました僕の答え、そ・れ・は、囲いだよ」

「囲いですか…」

「そう囲い。分かりやすく言うなら内があり外があるって事だね」

夜行さんはそう言うと僕の手を引き沼の一歩手前まで歩く。

「さぁ百聞は一見に如かず。行くよトッくん」

その言葉を最後に夜行さんは僕の手を引いたまま最後の一歩を踏み出し沼に足を踏み入れる。

「あっ!言い忘れていたけど決して僕の手を離さないように、離したが最後トッくんは沈み溺れてしまうから」

そして僕らは沼に沈み………いや違う。

沈むと言うよりまるで水に落ちるという感覚で落下していた。

「僕はぬらりひょんの回帰。

その妖術は家への無気。

つまり対象を内と外()の枠組みであるなら例え無敵な監獄だろと強固な金庫だろうが、不可侵な結界だろうが僕に侵入出来ないものこの世にはない」














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