河童の相撲
僕と夜行さんは解決屋夜行に届いた一通の依頼書の解決の為に東童村の山中に来ていた。
山中は人の手があまり入ってなく自然豊かで時折見える山鳥やリスやモモンガ、鹿や猪等野生動物が穏やかに暮らす快適な場所だ。
僕と夜行さんはある場所を目指しそんな山中を歩き続けていた。
「トッくん、山の中をだいぶ歩いたが大丈夫かい、なんならこのボクの逞しく広い背中で背負ってあげようかい」
「いえ大丈夫です。
お気遣いありがとうございます。
以前の僕なら疲れて歩けなくなっていましたが今の僕なら全然疲れはなく平気です。
夜行さんの方は大丈夫ですか?」
「ハッハハ!トッくんのスルーはさておき、ボク、ボクね……う~んちょっと疲れたかな、なんでとっクンに背負ってもらおうかな~」
「はい、どうぞ」
僕はすぐさましゃがみ夜行さんを背負う体勢に入る。
「ハッハハ!いやいや冗談、冗談だよとっクン、ボクも全然疲れてないさ。
元気体力ともにMAXだい元気さ!
それにもしボクの方がとっクンに背負われたなんて皆に知れたらゴミを見る目付きどころか黒G以上の汚物を見るような蔑んだ目で見られるし、コッさんからはぜーーたいに拳骨がくるよ」
コッさんとは解決屋夜行の副頭領の立場にいる夜行さんとは真逆の性格をしていて僕と同じく死んで妖怪に回帰した大人、不破金剛さんの事である。
金剛さんだからコッさん、夜行さんは本人曰く親しい人には親しみを込めて名前の一文字を取り◯ッさんと呼ぶらしい。
だから僕も名前が透なのでトッくんと呼ばれている。
「ところでトッくん」
「何ですか夜行さん?」
「トッくんは河童についてどれだけ知っているかな~」
「河童ですか、僕が知っているのは緑色で頭に皿があって、手には水掻きで胡瓜と相撲が好きで河や湖、沼に生息している事です」
テレビや本等で知った河童に関する基本的知識を思い出しながら答えると夜行さんは僕があげる一つ一つの河童に関する特徴に満足そうに頷
いた。
「うんうん妖怪あるあるだね!
やっぱり若いからか物事に対する学習能力が高くて年を取るに連れて段々衰えているんじゃないかと危惧に危惧を重ね毎日枕を涙で濡らしているボクからしたら羨ましく思うよ、ってボクまだ四十代だから全然若いわ!」
妖怪あるある?
不思議に思う僕は他所に喜んだり、悲しんだり、怒ったり?感情豊かな夜行さん。
「はい夜行さんは全然若く見えます」
夜行さんは年齢は四十代を越えているが見た目は二十代後半にしか見えないし髭や怪しげな丸眼鏡が無いなら十代後半に見えると思う。
「ハッハハ!……トッくん、トッくんは誉めてるつもりかもしれないけど見えますって事は外見だけで中身年相応だて言ってるみたいなものだからね、結局は老けているって事だからね」
確かに夜行さんの言う通りだ。
「まぁいいよ、トッくん達十代と違い四十代は子供がいる立派なおじさん、おばさん若くないのはなのは事実だからね、ところで話しは変わるどころかクエスチョン!トッくんに問題です」
「問題ですか?」
「うんうん問題、さてさてトッくんも知っている河童ですがそんな河童の妖級はなーんでしょ」
「河童の妖級……」
妖級とは妖怪の強さつまりランクである。
妖怪はその強さ、危険度により4つの位置付けが決まっている。
下から
小妖
中妖
大妖
神妖
一つの妖級が違うだけで強さ危険度は段違いに違う。
中妖は村を滅ぼす強さ、危険度。
大妖は都市を滅ぼす強さ、危険度。
神妖にいたっては国を滅ぼす強さ、危険度である。
その中で河童の妖級と謂うなら、河童は力は強いが人と相撲をとるのは好きだが無作為に人を襲うなんて聞かない妖怪である。
強さはあるが危険度は低いはず…
「河童は力は強いと聞きますが人をむやみに襲う妖怪とは聞かないので中妖だと思います」
「本当に?」
僕が答えると夜行さんはニヤニヤしながら再確認を行った。
「はい」
「今なら変えれるけどトッくんは答えはそれでいいのかな~」
「はい変更はありません」
「………ざんね~ん!トッくんの答えは不正解です!」
中妖怪ではない、じゃあいったい?
「答えはトッくんに馴染み深く現在平日にも関わらずトッくんが学校に行っていない原因になった妖怪と同じ妖級です!」
僕に馴染みが深く平日にも関わらず学校に行っていない原因の妖怪となると一つしかない、ないのだが
「河童は鵺と同じ大妖なんですか」
「そう大妖、河童はねトッくんが戦った鵺と同じ大妖の妖級にいる妖怪だよ」
鵺、6月に僕が自分の力を認識したうえで初めて戦い解決屋夜行に入る決断をした妖怪である。
大妖に相応しい強さと危険度でありその鵺との戦いの余波で校舎は半壊し現在休校となっている。
生徒、先生、職員、学校関係者の方々には本当に申し訳なく思います。
本当なら僕の責任もあるので弁償しなければならないが夜行さんが妖怪退治、隠匿を生業にする六法機関に話をつけ本来苦情や何かしらの罰がくだるところを僕のお陰で大妖である鵺を退治することが出来たんだといかに僕が役にたったかを相手に反論を許さないと言いますか口を挟めないほどの熱弁で捲し立ておとがめはなくなった。
「不思議に思うかいなんで人をむやみに襲わない筈の河童が大妖なのかと」
「はい」
「まぁそれについては今口で言うよりも実際に会い言葉を交わせば分かるさ、何事も百聞は一見に如かずだよ、ほらたわいのない話していたら目的地に着いたよ」
僕と夜行さんは話していたら山中にある目の前に【底なし沼の為危険】の立て札がある暗く濁った沼に行き着いた。
「此処が目的地である河住沼今回のたわいのない話の主旨であり依頼主である河童が住まう沼さ」