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妖魔回帰  作者: 明夢
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妖怪回帰

 画用紙に絵を描く様に辺り一面に降り注ぎ床を壁を空間を彩るのは吐き気をおよぼす程に濃い鉄の臭いと煮詰めたように赤黒い血と元は形を持ち今はぐちゃぐちゃに潰れた臓物。


そんな絵を祝福する様に奏でられるは絶望と恐怖と痛みの調べ。

 

僕を中心に……いや僕を残し描かれ奏でた正体たるそれは今度は僕に向けて牙を鳴らす。

(ああ、僕は死ぬのか)

5月8日18時この日あまりにも呆気なく僕の人生は終わりを告げた。

 

 始まりはよくあるたわいもないありふれた日常からであった。

冥杏高校に通う一年の僕邑雲透(ムラクモトオル)はゴールデンウィーク最終日に思い出作りとして同じクラスの佐藤君、佐伯君、田中君の男子3名と南さん、山田さんの女子2名の5人組のグループと共に都内の廃ビルへとやって来た。


この廃ビルはかつては小会社が使っていたもので四階建てで出来ており3年前に会社が倒産してからは全く使われてなく建て直しや解体されることもなく放置されていた。


3年人が使わないだけで窓ガラスは割れ壁には罅や割れ目まである。

元々の建築自体に問題があるのかそれとも僕等の様に外部から入る者達が原因なのかそれは定かではない。

……ただそんな中でも一つ確かに言える事がある。

この廃ビルはまともではないということだ。

朽ちている建物とかそういう目に見て分かる様な現ではなく…………そう、いうなら虚。

雰囲気、気配そういった目に見えないものである。

この廃ビルからは重く深く冷たく淀んだなにかまるで闇の様などす黒いなにかを感じた。


今すぐにでも立ち去らなければ取り返しのならない事に成りそうな気がするそんな焦燥感を抱くがどうやらそう感じているのは僕だけであり目の前で無邪気にはしゃいでいる彼等を見ると何も言うことが出来なかった。


そもそも肝試しとはいえ何故この廃ビルを選んだのかと云うと此処が廃ビルだからというだけではなく有り体にいえば曰く付きだからである。


神隠し

良くある怪談である。

急に人が原因不明で突然と消え消えた人は神の国だったり闇の間だったり地獄だったりこの世とは違う世界に行き帰ることが出来るのはほんの僅かその多くは消えたままであるとされる。


つまりこの廃ビルでは神隠しが起きるとされているのだ。


聞く人によれば迷信だとたかが噂だろうと思うかもしれないが実はこの廃ビルの神隠しはただの曰くではなく現実味のある曰くなのである。


何故ならこの廃ビルに入った人が神隠しの様に消えているからである。

しかもその数はなんと20人を越えておりただの一人もこの廃ビルから帰ってはいないのだ。


20人近く居なくなっているのだ勿論家族や友人から行方不明として警察への捜査依頼は出ていた。

だが警察の懸命な捜査を虚しく今尚発見できず仕舞いである。


警察も馬鹿ではない行方不明者達の痕跡をたどり行方不明者達が廃ビルに入った事はとうに分かってはいた。

だから勿論廃ビルの中にも捜索は入った。

だが廃ビルの中からは行方不明者誰一人の痕跡も出なかった。

まさに怪談神隠しである。


だってそうであろう廃ビルに入ったのは確実なのに廃ビルの中からは行方不明者誰一人として痕跡はなかった。

つまり廃ビル内を歩いただろう足跡も指紋もなく警察が捜索に入った時以外つまりはここ数年人が入った形跡がまるで無かったのだ。


不思議を通り越し不気味。


まるで行方不明者達は廃ビルに入ったと同時に廃ビルではなく違う場所に飛ばされたみたいに。


時刻は17時30分廃ビル前に集まった僕等6人は

「よし!じゃあ行くぞ!」

リーダーたる佐藤君の合図と共に廃ビルの中に足を踏み入れた。

普通肝試しなら夜ではないかと思われるが

噂ではこの廃ビルの中に入り18時を過ぎてしまうと神隠しに逢うとされてる。


廃ビルの中は外観と同じ様に錆や罅、所々崩れが有るものの不思議と机や椅子は散乱してはなく当時使われていた時の面影は残っていた。


二階三階四階を繋ぐ階段は錆や軋みはあるものの問題なく上がれた。


「所々ボロいけどなんか普通の廃ビルって感じだな」


「ああ、なんか拍子抜けだな」


「もーだったら早く出ようよこんな所」


「そうよこんな所居たってつまらないしカラオケでも行こうよ」


たわいもない話しをしながら廃ビルの中を探索する佐伯君、田中君、南さん、山田さんであったがこういうのは行く迄が楽しいものであり一通り四階迄見た後一階に戻った後速くも飽きがきて愚痴を溢していた。


「うっせぇぞお前ら!もうすぐ噂の18時だそれまで待ってろ!」

腕時計を見ながら佐藤君が振り返り四人に怒鳴り声をあげた後再び腕時計を見ながらカウントダウンを始めた。


「5…4…3…2…1」

時間は18時00分噂の時刻を迎えた。


「よし噂の時間だ!どうだ!」


佐藤君は何か起きたかと周りを見渡すが特に変わった様子はなく変化は見受けられなかった。


「なんだんよ結局ガセじゃねぇか」


「まったく期待して損したぜ」


「ほら言った通りじゃない」


「そうよ無駄な時間だったわ」


口々に文句を言う彼等に佐藤君も噂がガセだと知ると

「チッ!はいはい俺が悪かった!……あーあガセかよつまんねぇなぁこんなことなら来るんじゃなかったぜ」

悪態をつく。


それから佐藤君が廃ビルから出ようと言い出したので僕等は出口に向かい足を進めた。


正直その意見には賛成だった。

この廃ビルに入った瞬間から背筋が凍るよう様な嫌な悪寒がしていたのだ。

それは18時に成る程激しさを増していき一刻も早くこの場を去らなければ不味い事が起きると感じていた。

だが結局は何も起きずどうやら僕の杞憂だったみたいだ。


(取り敢えずは何も起きなくてよかった)

胸を撫で下ろす僕は皆と同じく出口に向かい歩いていた。


(結局この気持ちの悪い感じはなんなんだろう)

今尚悪寒は僕を絶えず襲い正体も分からず仕舞いではあるがもう肝試しは終わって後は帰るだけその事に安堵し足を進め後出口迄数センチの距離で全てが闇に包まれた。


外から射していた夕日も道路を照らす街頭も全ての光が消え失せ辺りを暗闇と静寂が包んだのだ。


「なんだ!なんなんだよ!」


「キャアー!」


人というのは自分が予想だにしない咄嗟の変化に対応することが出来ないものだ。

突然の闇に恐怖と不安を抱き戸惑い慌てふためく佐藤君達をよそに僕の体はもはや立っていることさえままならない程に震えだし僕はその場に塞ぎ込んだ。


その時だ

ギギギギギギ

廃ビルの中一帯を何かが這いずる音とまるで固い金属が擦れている様な不快な金切り音が響いた。


「キャアー!」


「!?今度はなんだ!」


「なんだよこの音!」


「君が悪いわ!」


突然な不気味な音に恐怖と不安も高められ更に慌てふためくになる佐藤君達。


皆がそれでも僅かに残る冷静さを元に音の正体を探ろうと各自スマホを出し辺りを照らす。


だが冷静さと言っても僅かなもの普通ならお互いに背中合わせで円を作り死角が無い様に照らすものだ。

皆スマホの明かりを手掛かりに僕を中心に円は作れたもののそれ以上に考える余力はなく忙しく全員バラバラの方を照らしている。


皆本能で分かっているのだ何が起こっているのかは分からないだが何かが、得たいの知れない何かが居ることを。


そしてそれは決して僕達の味方では無いことを。


ならばこの先に起こる事は容易に想像が出きる。


味方では無い不気味な存在に纏まりの無い恐怖と不安に彩られた集団。


その得たいの知れない何かはそれが至極当然の様に一切の躊躇いなく僕等に牙を向いた。


初めは南さんだった。

明かりで何か気付いた南さんはスマホを持っていない震える指で自分のスマホで照らし出している方を指差し声を上げようとした瞬間


「あっ…あれ、キャアアア!!……」


何かが動く金切り音と共に声は悲鳴に変わった。


グシャ!

ドサッ!


そして悲鳴は、南さんの声は瞬時に無くなり何かを潰した様な音が鳴った音が鳴ると次に

何かが地面に落ちた音が暗闇に木霊した。


「!?おいおいなんだ今の音!」


「南!おいどうした南!」


「なに!なんなのよー!」


「なんだ…うわっー!!……」


また何かが動く風切り音がしたと思ったら次は田中君の悲鳴が上がり南さんの同様に


グシャ!

ドサッ!


消えた。


一分もしない間に合二人人間が悲鳴と共に消える残された人間の高鳴っていた恐怖と不安が最高値に成るには充分である。


「おい!?田中!返事をしろよ田中!!」


佐藤君が田中君の名を必至に呼ぶが声が暗闇を反響するだけで反応はない。


「くそ!なんなんだよ一体!」


「何が起きてんだよ!」


状況が分からず困惑と苛立ち、口からは叫びを目からは涙が溢れる。


「グスッ…グスッ…もういやー!」


耐えきれなくなった山田さんは心から出る衝動のまま暗闇の中を闇雲に走り出した。


「おい!山田!」


「馬鹿が!離れるんじゃねぇ!」


山田さんの足音が響く暗闇の中を山田さんを呼び止めようと必死に叫ぶ佐藤君と佐伯君。


だが群れから離れた個は狩る側からしたら無防備で容易いただの自分から飛び込んでくる馬鹿な獲物でしかない。


「誰かぁ!誰かぁ助け…キャアアー!!……」


暗闇の中誰に聞こえるとも分からない助けを必死に呼ぶ山田さん。


だが結局どう足掻こうとも辿り着く結果は変わらない。


南さんと田中君と同じ様に何かが動く風切り音がしたと同時に悲鳴に変わり


グシャ!

ドサッ!


声が消えた。


「おい山田!、嘘だろ…おい山田!」


「ふざけんな、ふざけんなよ、なんなん……」


次に佐伯君が消えた。


残ったのは僕と佐藤君だけ。


「クッソ……」


佐藤君の声とスマホの光が消えた。


「……えっ、さ、佐藤君。

……嘘だよね…さ、さいと……」


佐藤君もやられたのか一人残った僕は塞ぎ込んでいた顔をあげ暗闇に手を伸ばすと誰かに肩を捕まれた。


思わず声をあげそうになった僕を表面から小さな声が制した。


「しっ、静かにしろ邑雲」


「さ、佐藤君なの?」


「ああ、そうだ。

大丈夫俺はお前の前にいる。

それよりもよく聞け邑雲、何が俺達を襲ってんのか分かんねぇ、だがどうやらそいつは音と光に反応してるみたいだ」


「音と光」


「そうだ、だから今から俺が言うことをよく聞け。

いいか今から俺は声をあげて走り出す。

そしたらお前は俺とは正反対にゆっくりとでいい音をたてないように行くんだ、いいな」


「待って、待っよそんなことしたら佐藤君が

、それにこんな暗闇のなか走ったとこで出口も分かんないんだよ」


「どのみちこのままじっとしていても助かるかは分かんねぇ、なら掛けてみるしかねぇそれに出口なら分かる」


「えっ?」


「いいかゆっくりと前を見ろ」


佐藤君の言うがまま音が出ないように前を見ると微かに明かりが見えた。


スマホの光だ。


「あれが誰のスマホかは分かんねぇがあの光の側にある看板俺達が入ってきた扉の近くに有ったもんだ、ということは少なくともあの看板の方は俺達が入ってきた入り口の方っていうわけだ」


「な、なら二人で行ったら…」


「フッ、そうしてぇところだが奴が音と光に反応しているなら二人で行くにはリスクが高いしそれ以前に奴の位置が此方には分かんねぇ、もし奴が入り口の方に居るなら意味がねぇ」


「だけど、それじゃあ…佐藤君が」


佐藤君が言っているのは自分が囮になり惹き付けてる間に僕に逃げろと言っているんだ。

そんなこと出来るわけがない。


「大丈夫心配すんな、元はといえば俺がこんなとこ来ようと言い出したのが原因だ、そのせいであいつ等が…」


佐藤君は自分も恐いのに責任を感じ僕だけでも助けようとしている大丈夫と心配するなと震える手で僕の肩を掴み震える口で声を発しながら、暗闇で佐藤君の顔は見えないがきっと佐藤君の顔は後悔と今から自分に起きる恐怖で涙を流しているのだろう。

それでも僕を助けようとしている。


僕の目から涙が溢れる。


「佐藤君…」


「なぁに心配するな俺も声を出したらすぐに黙ってやり過ごして逃げるさ」


分かっている。

そんなこと無理な事を


分かっている。

必ず死ぬ事を


分かっている。

これが最後でありもう二度と逢えない事を


「いいか三秒数得たら行く」


分かっている、分かっているのに佐藤君の決意は恐怖に彩られながらも決して絶えない決意を感じとり僕は頷く。


「よし、じゃあいくぞ」


「1」


「2」


「3」


「ウォォォォォォォォォ此方だ化物!!」


3を数得たと同時に佐藤君は持っているスマホを振り回しながら声をあらげ走っていき僕はゆっくりと音をたてないようにスマホが照らす方へ這っていく。


その瞬間何かはか金切り音をたてながら佐藤君の方へと向かう。


分かっていた。

佐藤君はすぐに黙ると言ったがそれでは意味がないことを僕がゆっくりと音をたてないように行かなければならない以上声を出し続けなければならない事を


その証拠に

「此方だ化物!!!!」


今尚佐藤君は叫びつづける。


涙が溢れる。

今すぐにでも佐藤君に駄目だと逃げてと叫びたい、だがそれは出来ない。

佐藤君の必死の決意を裏切ることになる。


どれだけの時間が過ぎたのだろう。

既に佐藤君の声は聞こえない。


今聞こえるのは何かが何かを食べてる

グシャグシャ…グシャグシャ

咀嚼音。


何かをなんて既に分かってる、分かりきってる。

恐怖で今すぐにでも赤子の様に蹲りたい耳を塞ぎたい、でも僕にはもう許されない事だ。


僕が今するのは懸命に必死に入り口に向かい生還することだ。


着いた、着いた。

落ちていたスマホの近くまで来た僕はスマホを避け入り口だと思われる場所を目指し僕の指はガラス扉に触れた。


後はこのガラス扉を開け外に出るだけだ。


だがそこで僕は今になってようやく気付いた。


ガラス扉に近付いたのにも関わらず外が廃ビルの様に暗闇であり一切の光も無いことに。


だが今はそんなことよりも此処から出るのが先だとガラス扉を押すも入って来た時とは違いガラス扉はビクともしない。

まるでこの廃ビルが穴の無い箱に包まれてるみたいだ


「な、なんで、此処まできたのに、佐藤君が頑張ってやっと来たのになんで!?」


膝たちで叫びながらガラス扉を力一杯叩くもビクともしない。


それこそが僕の失態である。

『音をたてるな』僕はこの禁を破ってしまった。


カラカラ


落ちていたスマホが何かに蹴飛ばされたように僕の足に当たった。


僕は足に当たったスマホの方を見その光により知った。

今まで何が僕達を理不尽に慈悲もなく襲っていたのか。



そして僕はその姿を見た瞬間音と神隠しの正体を理解した。


其処に居たのは佐藤君の無惨にも千切れた上半身を口から生える牙で捕まえ貪り喰う百足


しかも只の百足ではないこの廃ビルの中を全て覆い尽くすぐらいに大きい大百足であった。

(…これが神隠しの正体)


つまりこの廃ビルで行方不明になった20人も人は消えたのではなくこの大百足が欠片も残さず殺し食べたそれだけの事なのだ。


ドサリ!


大百足は佐藤君の上半身を口から落とすと牙をギリギリと鳴らし音を出した僕を認識するとその巨体から想像もつかない凄いスピードで僕に迫った。


僕は其処で自分の死を悟った。

(ああ、僕は死ぬのか、ごめんね佐藤君)


そして大百足はその口に生える鋭利な牙を広げると僕を上下に真っ二つ引き裂いた。




僕は目を覚ましたら知らない部屋で布団に眠っていた。


まだ意識がハッキリとしない朧気な中辺りを見渡すと床は畳で何処かは分からないが和室に居るようだ。


しばらく茫然と見ていると朧気だった意識もはっきりとしていくなか自分に何が起きたのか思いだした。


(そうだ僕は死んだんだ、佐藤君も佐伯君も田中君も南さんも山田さんもあの大百足に、なにも出来ずに)


「…あれ?」


其処で気付いた僕も大百足に上下に真っ二つに引き裂かれ死んだ筈なのに体を触るが上下は真っ二つになって居ないどころか傷一つない。


(もしかして全て夢だったのかな)


そして今も夢を見続けているんじゃないかと頬をつねるが


「痛い…」


取り敢えず今は夢ではなく現実だということは分かった。


何がなんだか分からず困惑する僕の耳に床の軋む音がした。


ギシ…ギシ…ギシ


音はだんだんと僕の方に近付いており僕が居る和室前で止むと襖がバッ!と勢いよく開くと


「おや?

おお!やあやあやあどうやらお目覚めみたいだね少年!」


やたらとテンションが高い和服に顔に丸眼鏡を掛けた男性が入ってきた。


「アッハハハ少年体の調子はどうだい!痛いとこはないかい!気分はどうだい!元気かい!」


次々とテンション高く質問を飛ばす男性に戸惑いながらも


「えっ、えっーと何がなんだか分からないですが体は大丈夫です」


僕の返答に男性は腕を組み満足そうに仕切りに頷いた。


「そうかそうかそれは良かった!本当によかった!じゃあ質問を変えるよ……回帰した気分はどうだい少年」


(回帰?)


男性は人が変わった様に突然今までのテンションが嘘だったように落ち着いた声でよく分からない事を聞いていた。


(回帰ってなんだろう、何かの比喩なのかな?)


困惑する僕に男性は僕の側で胡座をかく。


「邑雲透君、君はね黄泉変えったんだよ」


「…黄泉がえった」


「そう黄泉変えった、言っとくけど黄泉帰ったではなく黄泉変えっただよ。

邑雲透君、君は死んで黄泉変えって回帰したんだよ妖怪にね」


「妖怪って、いったいどういう事ですか?」


男性の言葉の意味が理解できず困惑する僕。


「簡単に云えば君はもう普通の人間ではなくなったんだよ。」


「人間じゃなくなった僕がですか…?」


「そうだよ、まぁ性格に云えば妖怪の回帰を果たした人間だけどね」


男性は其処まで告げると手を広げこう言った。


「ようこ回帰を果たした少年よ

此処は解決屋夜行、妖怪や回帰者の住まう場所だよ」




かつての面影がない程に倒壊した廃ビルの前にフードを被った男が立っていた。


「クックック、アッハハハハハハ!!」


男は何が可笑しいのか愉快そうに嗤う。


「あ~あ。

しっかしまさか大百足が殺されるとはなぁ

本当なら直ぐに殺した奴を見つけ出し殺してぇところだが…まぁいいかどこのどいつかは知らねぇが大百足がそいつより弱かったそれだけだしな、それにしても……この妖気俺が知っている奴等にはいねぇな」


男はそう言い倒壊した廃ビルに背を向けると夜空に浮かぶ満月を見る。

フードから微かに見える男の晴眼は満月を通し大百足を殺した者の幻影を写し出す。


「ああ、まだ見ぬ強き者よお互いの血肉を喰らい魂命を通し精魂を削り死の境地のなか合間見えるその時を待ってるぞ」










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