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伊海島事変  作者: osagi
5/12

<防衛出動>

 伊海島との通信が途絶してから二日目。島は完全に正体不明の武装勢力に占拠されていた。


 現在、伊海島周辺には海上警備行動によって集結した海上自衛隊の護衛艦が伊海島の監視と潜水艦の警戒を行ない、上空では哨戒機が島の監視活動を行なっている。


 だが、そんな伊海島の近くには何隻もの灰色の護衛艦の中に混じって一隻の白い海上保安庁の巡視船の姿があった。


 「我々は日本国外務省の外交官です。我々との話に応じていただけるのであれば、埠頭に白色の旗を掲げてください」


 巡視船の拡声器からはその後も同じ意味の言葉が中国語、韓国語、英語、ロシア語と様々な言語で言われるが島からの反応は無い。それどころか島にいつの間に持ち込んだのか、海沿いでは大砲の用意をしている。


 「砲門こちらに向けています!」

 「全速前進」

 「全速前進!」


 そして砲門を向けるという返答を確認した海上保安官がそう言うと、船長はそう指示を出しその指示が大声で復唱され、巡視船は全速力で離脱を始める。


 ドーン ドドーン ドーン


 散発的に発射される大砲の玉は巡視船に届くこともなく海面へと落ちていく。政府は巡視船に外交官をのせて接触を図るつもりであったが、平和的な解決に向けた話し合いすらできない状況である。


 これによって政府は一部政党の反対がありながらも国会で防衛出動が承認されたことを受け、内閣総理大臣は初めての防衛出動を自衛隊に命じたのだった。



・・・・・



 伊海島は主に五つの地区に分かれている。そしてその地区の中で島民たちが生活しているのは伊海山がある伊海山地区を除く四つの地区である。


 島の北部、公北こうほく地区は東から駐在所、村役場、伊海島小中学校が立ち並ぶ地区であり、海岸には漁港で定期船も来る伊海島港と島唯一の浜である北伊海浜がある。


 島の西部、北部から坂を上っていくとそこは住西すみにし地区であり、診療所と商店があるほかは住宅で伊海島の島民の多くがこの地域に暮らしている。だがここから先、海側はずっと断崖絶壁が続くことになる。


 島の南部、西部の住宅地を抜けて日当たりのいい南農なんのう地区は牧場と畑が広がる広大な平地であり、島の端まで行くとここもやはり断崖絶壁である。


 島の東部、東神とうじん地区は神社があり、伊海島の麓に伊海洞窟がある場所である。そしてこの洞窟の前を過ぎるとそこからは急な坂となっており、道の左は伊海山の切り立った崖、右は海へと落ちる断崖絶壁となっており、そこを下りていくとようやく港のある北部へと戻ることができる。


 このように伊海島の地形、それは島に上陸するためのルートが非常に限られた形をしている。だが、当然のことながら上陸しやすい北部には敵も多く上陸するとなれば敵前上陸となるのは確実である。


 だが、そんなことを些細な問題にするほどの大きな問題、というより謎が残されていた。


 「なんでこんな古典的な装備なんだ」

 「まったくわかりません」


 防衛省では哨戒機から撮影された写真から敵の正体を明らかにしようとしていた。だが、写真には伊海島を占拠している人間たちが写っているのだが、そこにいる男たちはマスケット銃という旧式すぎるほど旧式の武器を持っているのだ。


 そのうえ、いつの間にか海岸線に設置されている大砲も大砲の隣に丸い鉄球が積み上げられているなど時代錯誤の兵器である。さらに言えば島を占拠している男たちの服装は日本的でも現代的でもないうえ、中には騎士のように全身もしくは部分的に鎧を身につけているものすらいる。


 「こいつらは中世か近世からタイムスリップでもしてきたのか」

 「そのまま島民と入れ替わっちゃいましたかね」


 もしこれが見た目通りの武器であれば敵前上陸もさほど脅威ではない。だが、こういった写真などによって武装勢力についての情報などが次々と判明していくほど相手の正体が分からなくなるのである。


 だが、そうだとしてもこれ以上島をそのままにしておく訳にはいかない。防衛省では作戦の立案と参加する部隊の編成などが練られていくことになったのであった。





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