急転30
ユンカースの仇であり、因縁のある相手…ジークフラムとの決着。だが、そこに想いを馳せている時間はない。
「負傷者は?」
「負傷者はいません。ただ、ジークフラムの攻撃で武器がへし折れた者が数名…」
「分かった。その者達は副武装を装備するように。それと、捕虜の対応については…」
エレオノールは、騎馬に乗りヒューゴ・トラケウのもとを目指しつつ部下に指示を下す。
椿はといえば、竜に乗ったズメイと並び走りつつ、会話を交わしていた。
「ズメイさん…どうしてここに?」
「竜の臭いを嗅ぎつけやしてね。リヒター隊長に許可を貰って駆けつけたって訳です」
ヘルムート・リヒターと、彼の指揮する軽装歩兵部隊はエレオノール隊とは別行動を取っている。それは承知していた事だったが、ここでズメイと竜兵が来てくれたのは有難かった。対ヒューゴ戦において大きな戦力となるだろう。
「ちなみに、リヒターさんはいまどこに…?」
リヒターは今回、戦況に応じて自由に動く権限を与えられている。自身の位置については伝令兵を使って定期的にエレオノールに報告しているが、今どこにいるのかは椿にも分からない。ズメイは一瞬表情を曇らせた後、椿の問いに答える。
「リヒター部隊長は…」




