急転29
剣を構える椿。だが、
「大丈夫」
とエレオノールが一歩踏み出した。
「死ぬのはてめえの方か、女ァ!」
ジークフラムの斧槍がエレオノールを襲う。だが、エレオノールは姿勢を下げてその一撃を躱し…そのまま、ジークフラムに近付き剣を振り下ろした。
「がっ…は…」
エレオノールの斬撃が、すでに満身創痍となっていたジークフラムにとってとどめの一撃となった。ジークフラム・ガイセは一度エレオノールと椿を睨みつけた後…地面に倒れ込む。
「クソ…が。なん…で…俺が…負けんだよ…」
「むしろ、こちらが問いたい。勝機がない事は分かっていたはず…どうして、降伏という道を選ばなかったのか。その理由を」
エレオノールの問いかけに、ジークフラムは笑った。最後の力を振り絞り…血を吐き出しながら。
「げはっ…ギャハハハッ!理由なんかねえよ!ひょっとしてあれか?実は俺には戦うべき深い理由があったんじゃないかとか、同情する余地があるんじゃないか、とか考えてんのか!?んなもんねえよ!」
ジークフラム・ガイセはエレオノールを睨みつける。
「ムカつくから殺す。強いから奪う。それだけだろうが!それを正義だ思想だ、誰かのためだなんだとよォ…ウゼえんだよ、てめえらは…!」
そう言い終えると、ジークフラムは大量に吐血した。そして、全ての力を使い果たしたかのようにがっくりと項垂れる。
「そうか…それならば、私からは何も言うまい」
最後にそう告げ、エレオノールは踵を返す。
怪物、ジークフラム・ガイセは死んだ。しかし…戦いはまだ終わっていない。




