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急転21
「この地形も足止めにならないなんて…」
椿は、後方から迫る竜を振り返りつつ呟いた。ジークフラムはここが森の中である事など全く障害だと感じていない様子だ。しかも、バラバラに散会して進軍しているにも関わらず他の隊には脇目もふらずエレオノールと椿のいる隊のみを目指して猛然と突き進んでいる。
(ここで時間は使いたくない…でも、逃げ切るのは無理だ。それなら…)
「エレナ…」
「ああ」
エレオノールは、少年が何を言おうとしているのかを察し頷いた。
「あの竜兵達とは…ここで決着を付けるしかないようだね」
「うん。逃げ切れるなら逃げ切りたかったけど…それは難しいみたいだ」
ヒューゴ・トラケウのもとへ辿り着くには、ジークフラムとの決着は避けられない。それがエレオノールと椿の導き出した答えだった。




