急転18
エレオノール率いる騎馬隊約10万は、平原東部の森林地帯に差し掛かった。決して大きな森ではないし、騎馬が通れない程険しくもない。だが、それでも行軍の速度は落ちる。一刻を争う現状において、この遅れが戦況を大きく左右するかもしれない…そう思えば、兵隊の心には焦りが芽生えてくる。
だが、椿はその焦りを押し殺し、あくまで冷静に状況を分析する。
(この森が僕達の進軍速度を遅らせる事も…ヒューゴさんの計算の内…?だとしたら…)
この進軍ルートもヒューゴに読まれているとしたら?もし自分がヒューゴの立場であれば…きっと、何らかの対策を講じるはず。だが、10万のエレオノール騎馬隊を足止めするとすれば少なくとも万を超える兵が必要だ。しかし、ヒューゴ軍がそれ程の兵をこの先に配置した様子はない。
そこまで思考したその時、椿の視界の先で何かが動いた。人…ではない。馬でもない。もっと大きなものだ。そして椿は、その存在に心当たりがあった。
「竜…!」
「よおォ!待ってたぜぇ…」
椿の呟きに答えるかのように、前方から声が響く。椿とエレオノールは、その声に聞き覚えがあった。忘れようとしても忘れられない…ウィル・ユンカースを殺した男。ジークフラム・ガイセの声だ。




