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急転15

 今から3時間ほど前。自身の天幕で伝令兵と2人きりになったヒューゴ・トラケウはこう命じた。


「服を脱ぎたまえ」


「えっ」


 伝令兵は困惑する。しかし、目の前の人物の困惑など気にも留めずヒューゴは自身の外套(マント)を脱ぎつつ言葉を続けた。


「私はこれから、君の服を身に着け敵左翼軍団へと向かう。そこでオスカー・グロスモントを倒し敵左翼軍軍団を壊滅させる」


「え、え…あの…え…?」


「左翼軍団が壊滅すれば、敵は片翼をもがれた鳥と同じ…側面からの攻撃に対処できないエレオノール軍は、我々に太刀打ちできなくなるだろう」


「えっと…あの…」


「もっとも、左翼軍団が壊滅する前に中央から騎馬隊を派遣し援軍に向かわせる可能性が高い。それはおそらく、今から4、5時間後といった所か。その報告を聞いた者がこの天幕に来るはずだ。おそらくニコラ将軍とモットレイ将軍が来るだろう。その時は、今私が言った事を伝えてくれ」


「えっと、あの、ち、ちょっと待ってください」


 伝令兵は、ヒューゴの言葉を理解しようとこめかみに手を当てながら考え込む。だが、ヒューゴは淡々と告げる。


「私の言葉を理解する必要はない。君はただ、私の言った言葉をそのまま伝えればいい。伝令兵なら、覚える事は得意だろう?」


「は、はい…」


「もし私の言葉を忘れてしまったら、そこの棚の二段目にニコラ将軍宛ての手紙を残してある。それを見せればいい」


「えっ…そこの棚に…?」


 伝令兵は驚きを隠せない。今回の戦いが始まってから、ヒューゴは常に本営にいた。皇帝用のこの天幕に入るのは、今が初めてのはず。という事は…棚に入れてある手紙というのは、開戦前にすでに書き終えていたものという事になる。


 つまりヒューゴ・トラケウは、開戦前からこの状況を予想していた――全ては、ヒューゴの計算通りに進んでいるという事だ。

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