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急転5
「大切なものがない?それならば何故戦っている、ヒューゴ・トラケウ!」
「全てを…壊すため。君の持つ勇気も、誇りも全て無価値だとそれを証明するためだ」
「そうか、ならばなおさら負ける訳にはいかないな!」
そんな問答の間にも、両者の間では凄まじい剣戟が繰り返されている。一撃一撃の威力ではオスカーが上だが、太刀筋の鋭さではヒューゴが上回っている。何度か互いの剣が体を掠め、それぞれの鎧には傷が刻まていた。しかし、致命傷には程遠い。
「はあああ!」
オスカーが渾身の一撃を繰り出した。肉を切らせて骨を断つ、反撃覚悟の振り下ろし。
「くっ…」
ヒューゴはそれを受け止めたが、あまりの威力に後方へ弾き飛ばされた。馬の体勢が大きく崩れ、左後方へよろよろとよろめく。それを好機と見て取ったオスカーは、愛馬を全力で走らせヒューゴへと向かう。
(ここで決める…!)
オスカーは再び全力の一撃を振るうため、大剣を大きく振りかぶった。




