急転2
ヒューゴは最初からミュルグレスの帰還など待ってはいなかった。彼が勝利のために選んだ手段…それは、自らの手でエレオノール軍最強の武人、オスカーを討ち取る事。この戦術のリスクの高さは誰の目にも明らかだ。何しろヒューゴ・トラケウという人物こそがヒューゴ軍の要。彼が死ねばヒューゴ軍は瓦解する。そして、例えヒューゴであろうとオスカーを相手にすれば万が一という事があり得る。
しかし、それでもヒューゴはオスカーとの戦いを選択した。
(ツバキ・ニイミに勝つには――それだけのリスクを背負う必要がある)
それが理由だ。
兵力的優位。ミュルグレスの帰還。そして、自身の圧倒的な能力。そういった有利な要素を加味しても尚、ヒューゴは椿に必ず勝てるとは思っていなかった。彼は、誰よりもツバキ・ニイミという人物の事を評価していた。今まで数々の窮地を乗り越えてきた少年を…誰よりも、敵として脅威に感じていた。勝つために手段は選ばない。
わざと取り乱して怒って見せたのも、この状況を作るための布石だ。綺麗な勝ち方など望んでいない。名誉も必要ない。ただ、勝てればそれでいい。
(ツバキ・ニイミ…私は、君の思い描く勝利の形を全力で叩き潰す)
ヒューゴ・トラケウはオスカーに向かって渾身の一撃を振り下ろした。




