最終戦開始36
オスカー率いるエレオノール軍左翼と、フィレル上将軍率いるヒューゴ軍右翼の戦いは佳境を迎えつつあった。
「はぁっ…はぁっ…!」
荒い息を吐くクロエ・フィレル。彼女の眼前では、部下であるマルセル・ホイサーとルボル・ホイサーの両名がオスカーを相手に奮戦を繰り広げている。しかし、両名の甲冑は所々砕け、手に持つ戦斧の刃は欠けている。一方のオスカーはと言えば…その甲冑に、目立った傷はひとつも付いていない。
(三対一で…これとはね)
フィレル上将軍は、自身の戦略が間違っていたとは思っていない。オスカー・グロスモントという武人を相手にするにあたって、彼女はこちらの持つ最強の駒…すなわち、自身とマルセル、ルボルの3名で当たる事を選択した。実際、他の戦略を取っていればすでにフィレル上将軍の軍はオスカーの圧倒的武勇によって壊滅していただろう。
だが、最善と思われる戦略を取って尚…クロエ・フィレルの軍は押されていた。マルセルとルボルも満身創痍である。
(でも、持たせるしかない…!)
勝てなくとも良い。とにかく時間を稼げば、ミュルグレスの別働隊が帰還し戦局は大きく変わる。とにかく今は、それまで耐えるしかない――。クロエ・フィレルがそう決意した時、突如敵軍の将…オスカー・グロスモントが半歩後ろへと下がった。




