最終戦開始33
「ヨハンネスを追う必要がありますか?」
ミュルグレスの後ろに続くランスロが疑問を投げかけた。
「ヨハンネスは愚物…その行動は読みやすい。とはいえ、追いかけて始末するには時間がかかります」
こういった場合、追いかける側よりも逃げる側の方が遥かに有利である事をランスロは熟知していた。何しろ、逃げる側には無数の選択肢があり追う側はその無数の選択肢の中から正解を見つけなければならない。無論、時間をかければいつかは見つける事ができるだろう。しかし、今はその時間が惜しい。
「ヨハンネス・フォン・リーゼンバッハは、この世で唯一のものを持っています」
ミュルグレスは静かに答える。ランスロは、その言葉だけで彼の上官が何を言いたいのかを察する事ができた。
「聖王国王家の血筋…ですか」
「その通りです、ランスロ。ヨハンネス王太子がいかほどの愚物であっても…彼の血筋は、やはり聖王国の人間を惹きつける。王太子が生きている限り、聖王国残党軍が息を吹き返す可能性があります」
ミュルグレスは聖王国残党軍を蹴散らしたが、殲滅してはいない。その多くは散り散りになり逃げ惑っている状況だ。ミュルグレスがこの戦場を離れた後にヨハンネスが号令をかければ、聖王国残党軍は再び士気を盛り返す危険性がある。
「しかし、ヨハンネス王太子さえ殺しておけば…聖王国残党軍は象徴を失い完全に瓦解します。例え回り道に見えたあったとしても、ヨハンネス王太子はここで始末しておくべきです」




