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最終戦開始29
ニコラ将軍の懸念は的中した。ヒューゴの動揺は瞬く間にヒューゴ軍兵士達の間に広まり、それはエレオノール軍にまで察知される事となった。ヒューゴの動揺でヒューゴ軍の間には、
(もしや、ここまで成り上がってきたヒューゴ陛下の神話も終わりか)
という懸念が広がり、逆にエレオノール軍ではいささかも動揺を見せないエレオノール・フォン・アンスバッハという人物に対する信頼が改めて芽生えつつある。
状況は完全にエレオノール軍にとって追い風となっている。
もっとも、これだけで趨勢が完全に決まってしまうほどに戦いは甘くない。エレオノール軍、ヒューゴ軍どちらが勝利を手にしてもおかしくはない状況だ。それぞれの軍の指揮官は自らの行動が勝利へ繋がると信じただただ最善を尽くすのみ。考えるべき事はいくらでもある。
それ故に、ヒューゴの天幕からクロエ・フィレルの指揮する右翼軍へと伝令が送られた事を気に留める者はほとんどいなかった。




