最終戦開始18
「よし、敵は対応が遅れている!このまま攻め寄せろ!」
バルテミーより命令を受けた五千程の騎馬隊が、カイから離れた位置…中央第二軍の右翼側を襲う。それを迎え撃つ重装歩兵部隊は、突然の奇襲に対応が遅れている――と、少なくともバルテミー側の五千人隊隊長、ミルボにはそう見えた。ミルボ隊長は自ら剣を抜き、眼前の敵に向かって突撃を敢行する。
「さあ、俺に続け――」
と叫び終わらぬその刹那、彼の背に冷たい感覚が走った。
(なんだ、この感覚…ひょっとして、俺は何か思い違いを…)
そう直感し、慌てて自らの前に剣を掲げ防御の姿勢を取った事が彼の命を救った。次の瞬間、目にも止まらぬ速度で大剣がミルボの体に打ち付けられたからだ。その大剣はミルボの剣を断ち折り、さらには甲冑にすら斬り裂いた。それでも彼が一命を取り留めたのは、剣で防御したために大剣の威力が軽減した事と、バランスを崩して騎馬から振り落とされた事が幸いしたためだろう。
だが、骨まで届くその攻撃はたった一撃でミルボを戦闘不能に陥らせた。
「ミ、ミルボ隊長…!?」
「なんだ、あの大剣…勇壮の聖騎士以外に、あんな大剣使いが敵にいるなんて聞いてないぞ!?」
突然打ち倒された隊長を前に、思わず足を止める騎馬達。それを睨み付けつつ、大剣を振るった男は言った。
「ああ、そうだ。私などしょせんは聖騎士には及ばない…だが、貴様ら三下共にくれてやるほど、この命は安くはないぞ」
そう言い放ち、カイ配下の右翼部隊長…カムラン・フォン・レオンハルトのかつての副長ユーウェイン・ランカスターは大剣を構え直した。




