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最終戦開始17

「どうした、オレを止められる奴はいないのか!」


 エレオノール軍中央第二軍団長、カイ・ネヴィルは自ら先頭に立ち槍を振るう。あくまで重装歩兵であるため、その動きは騎馬隊の如き疾風の速度とは言えない。だが、着実に一歩ずつ敵軍を押し返していくその姿からはまるで伝説の(オーガ)が如き威圧感が見て取れた。


「くそ、なんなんだあの強さは!?」


信仰の聖騎士パラディン・オブ・フェイス…あいつさえ討ち取れば…!」


「やめておけ!」


 カイに向かって行こうとする兵達を制したのは、エルンスト配下の将軍のひとりバルテミー。彼は、不利な状況であってもあくまで動じず…いや、不利だからこそ戦いにおける定石(セオリー)を忘れない。


「カイ・ネヴィルはそう簡単に討ち取れん…まずは周りを叩け」


 バルテミーの取った戦法は、『敵の弱い所を叩く』という戦いの基本中の基本。突飛な策ではない。しかし、こういった場面で基本に忠実になれる指揮官は少ない。そして、バルテミーの配下たちもその基本に従う事の出来るだけの能力は有していた。バルテミーの指示を受け、カイから距離を取るように左右に分かれた兵達が一斉にエレオノール軍中央第二軍を襲う。


「…なるほど、ここが弱いと見抜いた、と。そういう訳か」


 自身の眼前に迫る敵軍を見つつ、カイ率いる中央第二軍の右翼部隊を担当する指揮官が小さく呟いた。

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