最終戦開始12
ミュルグレス配下の兵達の攻撃には激しさはない。静かに、しかし確実に任務を遂行する。それが彼らのやり方だ。そして、その兵達が聖王国軍残党で構成されるヨハンネス軍に迫っていた。
「各部隊、展開」
ヨハンネス軍との衝突まであと数分、という所でミュルグレスは部隊をいくつかに分け展開させた。それを見ていたヨハンネス軍の兵士が叫ぶ。
「て、敵軍が複数に分かれました!」
「包囲する気だな…各隊に伝令!敵は包囲を目論んでいる!それぞれ対処するように!」
そう通達したのは、ヨハンネス軍の前線部隊の指揮官を務める将軍だ。名はロタール、年齢はミュルグレスと同年代の三十代前半。彼は貴族出身だが軍務経験者で、大軍の指揮経験があるという点でヨハンネス軍の中で貴重な存在だった。決して能力は低くない。突如展開した敵軍に対しても、焦る事なく対処を支持した事からもそれは伺う事が出来る。
「侮るなよ…ミュルグレス・レイ」
ロータルは知っている。自分達が『無能王太子に率いられた哀れな咬ませ犬』だとヒューゴ軍に認識されている事を。
「だが、貴様のその認識を覆してやる…我々は決して、ただの無能の集まりではないぞ…!」




