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最終戦開始9

 戦いが開始して約1時間。エレオノール軍は互角以上の戦いを演じていた。カイ率いる中央第二軍はじりじりとではあるが確実に敵を押し返し、左翼軍はオスカーが敵の主力を引き付けている間に副長のガレスが兵を率い敵の数を減らしている。エステル率いる右翼は表面上は大きな動きはないものの、シャルンホストの動向を常に伺い続け、僅かな隙を見つければいつでも攻撃に移れる体勢だ。


「なんか、このまま勝てちゃいそうじゃない?」


 エレオノール軍本営。次々に伝令から届けられる情報を聞きながら、ハティは傍らの椿に問いかけた。


「敵を押してるって報告ばっかりだし…このまま、ヒューゴを倒せちゃうんじゃないの?」

「ううん、そう簡単にはいかないと思う――」


 そう前置きして、椿はハティに現状を説明した。


「ヒューゴ総司令官が率いる中央第一軍は、未だ戦線に投入されていない…つまり、敵にはまだ兵が30万存在してるんだ。こっちの軍が疲弊しきった時に、その無傷の30万を投入されたら…多分、一気に形成はヒューゴ軍側に傾いてしまう」

「なるほど…」

「もちろん、僕らもそれに対応しするためにエレナ率いる中央第一軍は戦いに加わらずこうやって兵力を温存している訳だけどね」

「ふむふむ…」

「だけど、敵にはさらにもうひとつ強力な手札がある。元聖騎士(パラディン)序列二位のミュルグレスさんが率いる10万の兵力が」


 現在、ミュルグレスはヨハンネス王太子率いる聖王国残党軍の討伐に向かっている。おそらくミュルグレスの実力であれば、聖王国残党軍を蹴散らすのにさほどの時間はかからないだろう。


「ミュルグレスさんが、聖王国残党軍を無力化してこの戦いに加わってくれば…敵軍は、ヒューゴさんとミュルグレスさん、二つの切り札を同時に行使できる。だから、現状は見かけほど有利って訳じゃないんだ」

「じゃあ、えっと…負けるって事?」

「ううん、負けないよ。僕達は…絶対に勝つ。勝ってみせる」

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