最終戦開始6
オスカー率いるエレオノール軍左翼軍団は、ヒューゴ軍右翼軍団に対して猛攻を仕掛けていた。ヒューゴ軍右翼軍団には、クーデター以前からヒューゴ配下だった者が多い。精鋭揃いと言って良いだろう。だが、
「と、止めろ!オスカー・グロスモントを止めろォ!」
ヒューゴ軍所属の下級指揮官のひとりが叫んだ。彼の眼前では、漆黒の甲冑に身を包んだ味方兵士が突如発生した竜巻にでも巻き込まれたかのように吹き飛ばされていた。だが、実際に兵士を吹き飛ばしたのは竜巻ではない。オスカー・グロスモントの振るう剣によって、次々と薙ぎ倒され、弾き飛ばされているのだった。
「勇壮の聖騎士、これほどだったのか…!」
「う、噂以上じゃないか…!」
ヒューゴ軍兵士とて、オスカー・グロスモントの名は聞いている。だが、目の前に迫り来る男の力は予想を超えていた。
「さあ、進むぞ!俺達が敵軍右翼軍団を抜けばこの戦いはエレオノール軍の勝ちへ大きく傾く!」
オスカーは敵を薙ぎ倒しつつ、兵を鼓舞する。そして彼の言葉は正しかった。もし右翼軍団が壊滅するような事になれば、ヒューゴ軍中央軍団は横の守りを失い側面を突かれる事となる。いかなヒューゴとて、正面からカイとエレオノールの中央第二、第一軍。側面からオスカーの左翼軍に同時に攻め立てられれば分が悪いだろう。
何しろ、ヒューゴ・トラケウがいくら能力が高かろうと彼はひとりしかいないのだ。二正面を同時に相手にする事は出来ない。




