最終戦開始3
「ユンカースさんの…!?いいんですか、僕が…これを使って…」
「何言ってんだ、お前よりふさわしい奴はいねえよ」
「あ、ありがとうございます…!」
椿はユンカースの剣を胸に抱いた。その様子を見て、リヒターはニヤリと笑う。
「ああ…ただ、剣の調整を職人に頼んだ代金は後で返してくれよ。ユンカース隊長の剣はユンカース隊長のもんだが、職人に頼んだのは俺の金だからな」
「なんか、いいハナシっぽかったのに…突然セコくなったな…」
じとっとした視線でリヒターを睨みつけるハティ。だが、椿はそんなリヒターの態度が有難かった。ユンカースが最後まで持っていた不屈の精神と、リヒターの気負わない態度。その二つをもらったような気がしたから。
「つまりはまあ…俺に金を返すまではちゃんと生き残ってくれよ、ツバキ」
「はい、リヒターさん。リヒターさんも…ちゃんと僕がお金を返すまで、生きていてくださいね」
「はは、当然だ。俺はのんびりダラダラ、100歳まで生きるって決めてんだ。…それじゃ、俺は潜むぜ」
そう告げて、リヒターは去っていった。今回、彼の率いる部隊はエレオノール隊からは独立した行動を取る。軍団長であるエレオノールに対して定期的な伝令は送るものの、どこでどう動くかは完全にリヒターに委ねられる事となっている。それが、ヘルムート・リヒターと彼の率いる軽装歩兵部隊を最も効率よく運用する方法だと判断したためだ。




