最終決戦14
「ネヴィル卿、調子はいかがですか?」
「ああ。オレも兵達もいい調子だ。部下に付けてもらった『あいつら』のおかげで、10万という大軍の統率も上手くいっている。そちらはどうだ?アンスバッハ殿」
「はい、こちらも開戦に向けて準備万端といった所です。ネヴィル卿、どうかご武運を」
そう告げて、エレオノールはカイと椿から離れていった。開戦前にカイと椿に2人で話をする機会を与えようというエレオノールなりの配慮なのだろう。その心遣いに、カイは内心で舌を巻く。
(さすがはアンスバッハ殿…なんという度量…!)
自分だったらこうも鮮やかに立ち回れただろうか?そう自問して、きっとそれは難しいだろうという結論に至る。
「あの…カイさん、どうしたんですか?」
何事か考えている様子のカイに首を傾げて尋ねる椿。
「いや…お前の傍にいるのがアンスバッハ殿なら、安心だなと思ってな」
「…?」
「だがな、オレは決してお前を諦めた訳じゃないぞ、ツバキ。オレのお前に対する気持ちは、今でも変わらない。いや…ずっと強くなるばかりだ」
「え、えっと、カイさん?どうしたんですか、急に…?」
「ふふっ…そうだな、焦る必要はなかったかもしれないな」
カイは涼やかに笑ってみせる。彼女が笑顔を見せるのは珍しい事だった。
「この戦いが終われば、世界は平和になって…いくらでも時間は出来る。その時に、ゆっくり話をするとしよう。だから…絶対に無事でいろよ、ツバキ。オレが言いたいのは、それだけだ」
「はい…!カイさんも、絶対にご無事でいてください!」




