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第三勢力6

「なっ…」


 ヨハンネスの予想外の発言に、貴族達の顔色が変わった。


「王太子殿下は何を言っているのだ…!」


「ヒューゴ・トラケウやミュルグレス・レイに喧嘩を売るような発言をするとは…」


「ま、待て…ひとまず話を聞こう。王太子殿下とて、あの強大なヒューゴに喧嘩を売る程馬鹿ではないはず…」


 壇上の端でひそひそと言葉を交わす貴族達を尻目に、ヨハンネスはいっそう声を張り上げる。


「知ってるぞ、俺は!お前達はどうせヒューゴやミュルグレスに媚びを売って生き残ろうとしてるんだろ!?恥を知れ!ヒューゴもミュルグレスも非戦闘員を殺したクズだぞ!お前達にプライドはないのか!?」


 『お前達』というのは、兵士を指しているのか貴族達を指しているのか――ひょっとしたら、両者に向けられた言葉であったかもしれない。


「クソ!予想以上の馬鹿だったか…あの無能王太子が!」


「ええい!ヨハンネス殿下の言葉を止めろ!」


「ヨハンネス殿下は乱心しておられる!止めるのだ!」


 貴族達は脇に控える護衛兵に命じ、ヨハンネスの演説を止めにかかる。だがそこにふらりと現れたのは、ヨハンネスと共に聖王国残党軍に参加した包帯姿の騎士だ。顔までが包帯に覆われており、その容貌は分からない。だが、あまり大柄な人物ではなかった――しかし、その騎士が剣を抜いたと見るや護衛兵達はバタバタと地に倒れ伏す。それはまるで魔法のような光景だった。


 もし剣の腕が立つ者がいれば、騎士が一瞬のうちに護衛兵達を峰打ちで気絶させた事に気がついただろう。だが、それを見抜ける者はこの場にはいない。


「な、何だ?何が起こった…?」


 貴族達が動揺を見せる中、ヨハンネスの演説は続く――。

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